◇SH0163◇金融庁、コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議(第7回) 別府文弥(2014/12/10)

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金融庁、コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議(第7回)

岩田合同法律事務所

弁護士 別 府 文 弥

1.はじめに

 2014年6月20日、「会社法の一部を改正する法律案」が可決・成立し、同年11月25日には会社法施行規則、会社計算規則等の改正案が公表される中、同年6月24日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014」(URL:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/honbunJP.pdf)に基づき、東京証券取引所及び金融庁を共同事務局として、コーポレートガバナンス・コードの策定に向けた有識者会議(以下「有識者会議」という。)が開催されている。

 コーポレートガバナンス・コードとは、企業統治の強化に向け、企業が遵守すべき規範であり、来年の株主総会のシーズンまでに間に合うことを目標として今後策定され、東京証券取引所の上場規則に盛り込まれることが予定されている模様である。

 本稿では、現在議事録に記載されている「コーポレートガバナンス・コードの基本的考え方に係るたたき台」(以下「たたき台」という。)について、その概要を紹介する。なお、今後の有識者会議での議論の状況により、たたき台の内容は変更されうる点に留意されたい。

2.たたき台の概要

(1)基本原則

 上場会社が遵守すべき基本原則として、以下の5つの原則が掲げられている。

 (i) 株主の権利・平等性の確保

 (ii) 株主以外のステークホルダーとの適切な協働

 (iii) 適切な情報開示と透明性の確保

 (iv) 取締役会等の責務

 (v) 株主との対話

 たたき台では以上の各基本原則に基づき、原則及び補充原則が掲げられている。以下、一部を抜粋して紹介する。

(2)株主の権利・平等性の確保

 【原則1-2. 株主総会における権利行使】の補充原則として、①上場会社は招集通知の早期の発送又はTDnet・自社のウェブサイトによる公表に努めるべきこと(補充原則1-2②)、②株主との建設的な対話の充実や、そのための正確な情報提供等の観点を考慮した株主総会関連の日程の適切な設定を行うべきこと(補充原則1-2③)等が掲げられている。

 また、【原則1-4】として、上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合、政策保有に関する方針を開示すべきことが掲げられており、注目される。

(3)株主以外のステークホルダーとの適切な協働

 【原則2-4】として、女性の活用を含む社内の多様性の確保が掲げられている。

 また、【原則2-5】として、内部通報に係る適切な体制整備並びに取締役会による体制整備の実現責務及び運用状況の監督を行うべきことが掲げられている。

(4)適切な情報開示と透明性の確保

 【原則3-1】として、上場会社は以下の事由について開示し、主体的に情報発信すべきことが掲げられている。

 (i) 会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、中長期的な経営計画

 (ii) 本コードの各原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針

 (iii) 取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続

 (iv)  取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針及び手続

 (v) 取締役会が上記(iv)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の個々の選任・指名の理由

(5)取締役会等の責務

 【基本原則4】として、上場会社の取締役会は、以下の事項を始めとする役割・責務を適切に果たすべきことが掲げられている。

 (i) 企業戦略等の大きな方向性を示すこと

 (ii) 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと

 (iii) 独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと

 なお、同基本原則では、当該取締役会の役割・責務が、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社のいずれの機関設計を採用する場合にも等しく果たされるべきとされており、たたき台においてこれらの機関設計のうちいずれかを原則としているものではないことが注目される。

 独立社外取締役については、【原則4-7】以下で原則が掲げられているが、特に【原則4-8】において、上場会社は独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとされていることが注目される。なお、【原則4-9. 独立社外取締役の独立性判断基準及び資質】については、現在具体的な内容につき検討されている模様である。

 その他、取締役会、監査役及び監査役会の役割・責務や、取締役・監査役等の受託者責任等が原則として掲げられており、注目される。

(6)株主との対話

 【原則5-1】として、上場会社の取締役会が株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針を検討・承認し、公開すべきことが掲げられている。

 また、【原則5-2】として、経営戦略や中長期の経営計画の策定・公表にあたって、中長期的な収益計画や資本政策の基本方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきことが掲げられている。

3.まとめ

 1.で述べたとおり、コーポレートガバナンス・コードは、来年の株主総会のシーズンまでに東京証券取引所の上場規則に盛り込まれることが予定されているところ、特に2.で紹介した原則、例えば独立社外取締役の2名以上の選任、株主総会関連の日程、政策保有株式や取締役会関連の方針策定等については、上場会社によっては新たな対応が必要となる余地があることから、有識者会議における議論状況について引き続き注視していく必要がある。

(べっぷ・ふみや)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2010年東京大学法科大学院卒業、2011年弁護士登録(新64期)。一般企業法務、M&A、渉外関連業務(契約書・クロスボーダー取引・競争法関係)、株主総会、訴訟等の案件に従事。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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