◇SH0221◇会社法施行規則等の一部を改正する省令の公布 松田貴男(2015/02/17)

未分類

会社法施行規則等の一部を改正する省令の公布

 

岩田合同法律事務所

弁護士 松 田 貴 男

1 改正会社法施行規則等の公布

 2015年2月6日、「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(平成27年法務省令第6号)が公布された。施行日は2015年5月1日である(一部の規定を除く[1])。

 今般の改正省令は2015年5月1日から施行される改正会社法(会社法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第九十号))及び会社法施行整備法(会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成二十六年法律第九十一号))を受けた改正となる。

 また、上記改正省令の公布と同日付で、会社法の改正に伴う会社更生法施行令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集[2]の結果(以下「パブコメ結果」)が法務省民事局参事官室より公表された。会社法施行規則等の改正の内容及びパブコメ結果については以下のウェブサイトから確認できる。http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080119&Mode=2

2 改正会社法施行規則における経過措置

 2014年11月25日に公表された会社法施行規則等の改正案からの修正という点では、パブコメ結果において、経過措置を定める改正省令附則の解釈の明確化(及びこれを踏まえた省令附則の条項修正)が行われている。改正省令の経過措置を定める附則の条文は、特に株主総会参考書類、事業報告の記載内容との関係で実務的に重要な規定であるため、改正案から修正や明確化が行われた点も含めて、改正省令附則における会社法施行規則に関する経過措置の内容(改正省令附則2条)を以下の表にまとめた[3]

 詳細については下記の表を参照していただきたいが、3月決算の会社を例にとれば、改正省令の経過措置の概要は以下の通りである。

  • 株主総会参考書類について(改正省令附則2条2項から5項)

原則として、2015年5月1日(施行日)以後に招集手続きが開始(株主総会参考書類の記載事項が取締役会の決議によって決定された時点を意味する)された場合には、その株主総会に係る株主総会参考書類から改正会社法施行規則が適用される。例外として、改正省令附則2項から4項に記載された事項(詳細は下記表ご参照)については、(3月決算の会社であれば)来年6月の定時株主総会から改正規定に対応すればよい。

  • 事業報告について(改正省令附則2条6項から8項)

原則として本年3月末に末日が到来する事業年度に係る事業報告及びその附属明細については改正前の従前どおりの対応でよい。例外として、有価証券報告書提出会社の、2015年5月1日以後に監査役の監査を受ける事業報告(2015年5月1日以後に特定取締役が監査役会の監査報告の内容の通知を受ける事業報告を意味する)については、事業年度末日に社外取締役を置いていない場合には社外取締役を置くことが相当でない理由の記載が求められる。

 

 株主総会参考書類や事業報告の記載事項の改正対応は、各社の株主総会実務への影響が大きいため、限られた時間の中で経過措置に照らして必要な事項を見定め、適時・的確に対応していくことが求められる。

 

<改正会社法施行規則における経過措置一覧>

改正省令条文

項目

内容

附則2条1項

創立総会・種類創立総会の参考書類

2015年5月1日前に招集の手続が開始された創立総会又は種類創立総会に係る創立総会参考書類記載については従前の例による。

附則2条2項

株主総会参考書類

改正会社法施行規則74条3項、76条3項及び77条8号の規定(これらを95条3号で準用する場合を含む)[4]は、201551日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会に係る株主総会参考書類より適用される。

例:3月決算の会社であれば、20163月末に終了する事業年度に係る定時株主総会の株主総会参考書類から適用。

附則2条3項

株主総会参考書類

改正会社法施行規則74条の3第3項(95条3号で準用する場合を含む)[5]のうち、同項1号の規定[6]は、201551日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会に係る株主総会参考書類より適用される。

また、上記の定時株主総会より前に開催される株主総会又は種類株主総会に係る株主総会参考書類においては、同項中「他の者」とあるのは「他の会社」に、「子会社等」とあるのは「子会社」とする。

附則2条4項

株主総会参考書類

改正会社法施行規則2条3項19条において定義が見直された特定関係事業者に関して、今次改正による見直し後の特定関係事業者の定義は、201551日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会に係る株主総会参考書類より適用される。

附則2条5項

株主総会参考書類

附則2条2項乃至4項に定めるもののほか、2015年5月1日より前に招集の手続きが開始された株主総会又は種類株主総会に係る株主総会参考書類の記載については、従前の例による(改正会社法施行規則の適用時期は201551日以後に招集の手続きが開始された株主総会又は種類株主総会に係る株主総会参考書類の記載から)。

 

※「招集の手続が開始された」とは、株主総会参考書類の記載事項が(取締役会設置会社においては取締役会の決議によって)決定された時点を指す(パブコメ結果第3.2.(7)⑯)。

附則2条6項

事業報告及び附属明細書

(1)    2条6項本文

2015年5月1日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る株式会社の事業報告及びその附属明細書の記載又は記録については、従前の例による。

(2)    2条6項但書

ただし、2015年5月1日以後に監査役の監査を受ける事業報告については、改正会社法施行規則124条2項及び3項の規定(有報提出会社に関して、事業年度末日に社外取締役を置いていない場合には社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告に記載することを義務付ける規定)[7]を適用する。

 

※上記(2)の「2015年5月1日以後に監査役の監査を受ける事業報告」は、監査役会設置会社については、2015年5月1日以後に特定取締役が監査役会の監査報告の内容の通知を受ける事業報告を意味する(パブコメ結果第3.2.(11)㉑、会社法施行規則132条2項)。

附則2条7項

事業報告

改正会社法施行規則118条2号の規定(内部統制システムについての運用状況の概要を事業報告に記載することを義務付ける規定)の適用に関し、2015年5月1日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る株式会社の事業報告については、同号中「運用状況」とあるのは、「運用状況(改正会社法の施行日以後のものに限る)」とする。

附則2条8項

事業報告及び附属明細書

改正会社法施行規則118条5号及び128条3項の規定(親会社等との間の利益相反取引に関する事項を記載することを義務付ける規定)に関し、2015年5月1日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る株式会社の事業報告及びその附属明細書においては、これらの規定中「含む」とあるのは、「含み、改正会社法の施行日以後にされたものに限る」とする。

 

 



[1] 2015年5月1日以外の日を施行日とする改正規定とその施行日は以下の通りである。

①    2015年2月6日を施行日とする改正規定:会社計算規則76条1項、93条1項、94条、96条2項・7項・8項、102条1項、113条(企業結合に関する会計基準等における表示科目の名称変更、非支配株主持分の扱いの変更等を踏まえた修正)

②    2015年4月1日を施行日とする改正規定:会社法施行規則103条2項(税理士法施行規則の改正に伴う改正)

[2] 詳細については、2014年12月4日付タイムライン「法務省、会社法の改正に伴う会社更生法施行令及び会社法施行規則等の改正に関する意見募集を開始 泉 篤志」を参照。

[3] なお、会社計算規則、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則についても改正省令附則3条及び4条においてそれぞれ経過措置が設けられているが本稿ではその内容は割愛した。

[4] 株式会社が公開会社であり、かつ、他の者の子会社等である場合における取締役、監査役、会計監査人の選任議案の記載内容に関する規定(「子会社等」の定義は、社外取締役の要件等との関係で、改正会社法2条3号の2ロ、改正会社法施行規則3条の2で新設された。)

[5] 株式会社が公開会社であり、かつ他の者の子会社等であるときにおける、監査等委員である取締役の選任議案の記載内容に関する規定

[6] 改正会社法施行規則74条の3第3項1号「候補者が現に当該他の者(自然人であるものに限る。)であるときは、その旨」

[7] 事業年度末において有価証券報告書提出会社(監査役会設置会社かつ大会社)が社外取締役を置いていない場合に社外取締役をおくことが相当でない理由を事業報告の内容に含めなければならないという規定(124条2項)、及びその理由として社外監査役が2名以上あることのみをもって当該理由とすることはできないとの規定(124条3項)。

(まつだ・たかお)

岩田合同法律事務所所属。2000年東京大学法学部卒業。2000年から2007年まで金融機関に勤務。2008年弁護士登録。2013年Harvard Law School修了(LL.M.)。主な著作:『実践TOBハンドブック改訂版』(共著、日経BP社、2010年)、『取引先の倒産対応マニュアル』(共著、日経ビジネス社、2009年)。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

<連絡先>

〒100-6310 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング10階 電話 03-3214-6205(代表) 

タイトルとURLをコピーしました