ミャンマー:外資による不動産の取得・使用規制
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 長谷川 良 和
ミャンマーにおける外資による不動産取得・使用に関する規制は、1987年不動産譲渡制限法に定められている。同法により、売買、贈与、担保等その形式を問わず、外国人又は外国企業が不動産を取得又は処分することは禁止されており、また1年超の不動産賃貸借を行うことも禁止されている。同法上、規制の対象となる「外国企業」は、「ミャンマー国民によって運営若しくは支配されていない会社若しくは組合、又は過半数の株式若しくは持分がミャンマー国民に保有されていない会社若しくは組合」と定義されているが、実務上は、ミャンマー法に基づいて設立された会社か否かを問わず、1人でも外国人等が会社の株式を有し、又は会社の保有・支配に関与している会社等であれば、上記の規制の適用を受けるとされており、不動産譲渡制限法上の文言よりも厳しい内容で運用されている。なお、不動産譲渡制限法上、不動産には、土地に加え、土地からの収益、建物及び土地上に建築・設置された物、その他建物に付着した物の全てが含まれる。
その結果、ミャンマーにおいて実務上、外国人又は外国企業に対して認められる不動産の使用に関する権利は、主に以下の3種類である(下記(ii)と(iii)に記載の各法令は不動産の使用に関しては言わば特別法と位置づけられる)。国有地及び民間が使用権を有する不動産のいずれについてもこれらの権利設定は可能である。
(i) 1年以下の賃借権
(ii) 外国投資法に基づく投資承認を取得した会社の場合、当初最大50年の賃借権(その後も10年を限度とする延長が2回まで認められる場合がある。)
(iii) 経済特区に設立された会社の場合、当初最大50年の賃借権(その後も25年を限度とする延長が認められる場合がある)
工場のために長期間の土地利用が必要な製造業や不動産開発業等では、上記(ii)又は(iii)に基づき長期間の不動産賃借権を得られないと事実上、進出が困難であり、その意味で、不動産譲渡制限法は不動産の長期利用を必要とする外国投資にとっては投資の障壁になっている。他方、外国投資法に基づく投資承認を取得せずに、例えば、市場調査や本社との連絡等の目的で拠点を設立する場合には、現時点では、事務所スペースのために建物やユニットを保有することはできず、賃借期間を1年以下とする賃貸借契約に基づき事務所スペースを賃借し(上記(i))、都度、更新あるいは新規契約の締結が必要になる。
実際にミャンマーで不動産の取得・使用を伴う事業を行う場合には、上記規制に留意しつつ、関係当局や専門家に都度、最新の情報を確認することが重要であろう。