◇SH0483◇タイ:国際貿易センター(ITC) 佐々木将平(2015/11/20)

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タイ:国際貿易センター(ITC)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 佐々木 将 平

 

 2015年1月から施行されたタイ投資委員会(Board of Investment、BOI)の新投資奨励策において、地域統括本部(International Headquarters、IHQ)と並んで注目されているのが、国際貿易センター(International Trading Center、ITC)の制度である。2014年末までに適用されていた前身の「部品及び半製品の調達事務所(International Procurement Office、IPO)」の制度と比較して要件が緩和され、販社・商社業務一般に利用可能性の高い制度となっている。

 ITCとは、「タイ法に基づき設立された法人であり、商品、原材料、部品の購入・販売事業及び貿易に関連するサービスを提供する者」とされ、国内外の製造業者又は商社から調達した商品等を、国内外の顧客に対して販売することが対象業務となる。ITCの認可要件及び対象商品は以下の通りで、旧制度のIPOと比較して要件が緩和されている。

  ITC IPO

要件

  1. ① 登録資本金を最低1,000万バーツ有すること。
  2. ② タイ国内向けの事業支出が年間1,500万バーツ以上であること(税務恩典要件)
  1. ① 倉庫を所有するか、長期契約によるレンタル倉庫を有し、コンピュータによる倉庫管理システムを有すること。
  2. ② 商品の調達、品質検査及び梱包業務を行うこと。
  3. ③ 国内を含む複数の調達先を有すること。
  4. ④ 登録資本金を最低1,000万バーツ有すること。

対象商品

  1. 完成品、原材料、部品及び半製品
  1. 原材料、部品及び半製品

 販売業は外国人事業法上の規制対象業務として外資の参入が制約されているが、BOIからITCとして認可を受けると、ITC対象業務に関しては外資100%で運営することが可能となる。外国人事業法上は卸売及び小売事業を外資100%で営むために一定の資本金要件(卸売、小売それぞれについて最低1億バーツ(2015年10月現在1バーツ約3.4円)以上。店舗数によって加重あり)を充たすことが求められているが、ITCを利用することにより、かかる要件を充たすことなく比較的少額の資本金で販社・商社業務を行うことが可能となる。もっとも、ITCの対象となるのは卸売業のみで小売業は対象外であるため、小売業を営むためには、上記資本金要件を充たすか別途外国人事業法上のライセンスを取得する必要がある。特に、製造設備の販売に関しては、自社の製造工程に利用する会社に対する販売は小売とみなされているので、注意が必要である。

 BOIからの恩典には、外国人のビザ及び就労許可の発給に関する優遇措置が含まれる。非BOI企業に対しては外国人1人に対してタイ人4人を雇用することが求められており、各社が日本人駐在員を増やすことの障壁となっているが、ITCとしてBOIから認可されると、かかる要件が適用されずBOIの認める範囲で就労許可の取得が可能となる。

 さらに、ITCについては、歳入庁(Revenue Department)からも税務上の恩典の付与を受けることができる。具体的には、海外で購買した商品の海外顧客に対する販売(out-out取引)からの所得に関する法人所得税の免税、当該法人所得税免税対象収入から支払われる配当金の源泉徴収税免税及びITCに勤務する外国人の個人所得税の減税(税率15%)といった恩典が用意されている。

 旧制度の下で既にIPOとして認可を受けている企業も、新規にITCを申請するか、既存プロジェクトの変更申請を行うことにより、ITCとしての恩典を受けることが認められている。

 

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