◇SH0233◇シャルレ株主代表訴訟判決の争点と課題(4) 丹羽繁夫(2015/02/27)

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シャルレ株主代表訴訟判決の争点と課題(4)

-神戸地判平成26年10月16日-

 

一般財団法人 日本品質保証機構

参与 丹 羽 繁 夫

(4) 賛同意見表明後から本公開買付けが不成立となるまでの経緯

 -同社は、10月29日、同社取締役会が本公開買付けに賛同意見を表明するに至るまでの手続等に関して、利益相反がある旨の内部通報がなされたことにより、外部の独立した、4名の弁護士により構成される第三者委員会を設置し、当該手続等の事実関係の調査と評価を行うこととした。10月31日に提出、開示された第三者委員会の「調査報告書」は、社外取締役らによる8月31日付利益計画策定承認プロセスにハヤテが関与した事実について、「創業家側が本件社外取締役らに対して上記のような状況下でアドバイスやサポートを行い、本件社外取締役らも当該アドバイスやサポートを受け入れていた事実は、著しく透明性を欠き、不公正な取引がなされているとの外観を生じさせる」ので、「本件利益計画策定承認プロセスにおける創業家アドバイザーの関与形態は、交渉の自由として認められる合理的範囲を超えるものであり、かつ、本件社外取締役らもこれを受け入れたと見られる状況にあったと評価できるから、……利益計画の承認に関する意思決定過程における透明性・公正性に問題があり、……利益相反行為があったという合理的疑念を払拭することもできない」、と報告した。当該「調査報告書」を踏まえて、同社取締役会は、11月7日、三井法律事務所より法的助言を受け、本公開買付けについての賛同意見を一旦撤回して、株式価値算定の基礎となる利益計画について、3名の外部の専門家で構成される検証委員会により再検証してもらうことを決議した;

 -大阪証券取引所は11月18日、第三者委員会による「調査報告書」並びに同社に対する照会の結果、(1)創業家のアドバイザーが、社外取締役らによる利益計画の検討過程に関与・アドバイスを行っていたと評価し得る事実、及び(2)同社が「株式の算定価格を低くする目的で利益計画を作成したと判断される可能性がある」とする法律事務所の意見を容認できないとして、意見書の正本を受領しなかった事実が明らかにされたので、9月19日付賛同意見表明は、重要な事項について投資者に誤解を生じさせる不適切な開示であり、同社の開示体制は改善の必要性が高いと判断し、「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則」23条1項に基づき、改善報告書を12月2日までに提出することを求めた;

 -同社は、11月19日に、検証委員会より「報告書」を受領したことを開示した。11月18日付当該報告書は、「ダウンケースである8月31日計画、アップケースである9月13日計画のいずれも、不合理であるとはいえない」と判断した;[9]

 -11月18日~28日の間に行われた社内調査により、さらに以下の事実が判明した:

① 被告H.K.は、ハヤテのアドバイスを受けて、平成20年8月3日から8月12日にかけて、低い公開買付け価格に賛同した場合の法的リスクなどについて社外取締役に説明すべきであると主張する執行役に対して、リスクを過大に評価した説明をすべきでない旨の指示をした。また、社外取締役に対する本公開買付けに関する最初の説明の場にハヤテが同席することに反対する執行役に対して、7月30日付で受領したKPMG FASによる算定結果の速報値を基に社内の者のみで議論しては、本公開買付けに賛同する方向での議論にならないとしてハヤテを出席させるよう指示した。さらに、被告H.K.は、ハヤテのアドバイスを受けて、平成20年8月21日頃から9月9日にかけて、執行役に対して、DCF法を採用しないこと、株価倍率法で採用する類似企業についてはEYTASによる算定結果で採用されている類似企業を採用すること、純資産法を採用しないこと、について、KPMG FASと交渉するよう指示した。なお、このような被告H.K.によるKPMG FASとの交渉指示については、MSからも、指示の具体的な内容についての指摘を受けていた;

② 社外取締役らは、社内調査の結果、前述の事実を認識した。

 -同社は12月2日、三井法律事務所より法的助言を受け、最終意見表明として、本公開買付けに賛同できない、との開示を行った。併せて、被告H.K.の同社代表執行役社長の職務を解任し、被告社外取締役らについても、後任取締役が株主総会で選任される時点で辞任することが開示された;

 -公開買付者らより12月17日、平成20年9月22日から12月16日までの間本公開買付けを実施したが、応募株式総数5,483,070株が買付予定株数の下限9,704,989株[10]に満たなかったために、応募株券等の全部買付けを実施しないとの開示が行われ、本株式公開付け及びその後に予定されていた本件MBO計画は実現されないまま終了した。


[9]同社は、検証委員会より前述「報告書」を受領した後に、さらに、KPMG FASとは別の第三者算定機関である株式会社コーポレートパートナーに1株当たりの株式価値の算定を依頼し、下記の算定結果を得ていた:
  株式市価法:509円~535円;
  DCF法:631円~747円;
  修正純資産法:709円~802円

[10]公開買付者らは、同社の自己株式を除く発行済株式総数(19,380,335株)から公開買付者らが保有する株式数(5,383,482株)及び創業家一族が保有する株式数(5,413,124株)を控除した株式数の過半数に相当する株式数(4,291,865株)の応募がなければ、公開買付けは成立しないとしていたので、買付予定株数の下限は、創業家一族が保有する株式数と、自己株式を除く発行済株式総数から公開買付者らが保有する株式数及び創業家一族が保有する株式数を控除した株式数の過半数に相当する株式数の合計9,704,989株であった。

(つづく)

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