◇SH0234◇シャルレ株主代表訴訟判決の争点と課題(5) 丹羽繁夫(2015/03/02)

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シャルレ株主代表訴訟判決の争点と課題(5)

-神戸地判平成26年10月16日-

一般財団法人 日本品質保証機構

参与 丹 羽 繁 夫

2.本判決の判断

 本件訴訟は、原告株主が、H.K.、H.H.及び社外取締役ら3名の併せて5名を被告として、本件MBO計画が頓挫したことにより本件MBO関連支出相当額の損害が発生したと主張して、同損害の回復を求めた株主代表訴訟である[11]

 本判決は、以下のように判断し、被告H.K.及び被告H.H.に対して、連帯して1億9,706万9,421円の損害賠償を命じ、被告社外取締役らに対しては賠償請求を棄却した。

(1) MBO検討過程における取締役の責務

 -平成18年12月に証券取引法が改正され、続いて、同19年9月には経済産業省がMBO指針を公表していた。MBOを実施する取締役が買付価格それ自体だけでなく、その決定手続の公正さにも十分に留意すべきものであることは、少なくともMBOの実務に携わる者の間においては、一般に認識されていた(本判決48、49頁);

 -MBOは、企業価値の維持・向上、ひいては会社の存亡にかかわる重大な会社経営上の問題である上、その実施に当たっては巨額の出費を伴うのが通常であることなどにかんがみると、取締役は、その実施に当たって、会社に対する善管注意義務の一環として、「企業価値の向上に資する内容のMBOを立案、計画した上、その実現(完遂)に向け、尽力すべき義務」(以下「MBO完遂尽力義務」)を負っている(47頁);

 -取締役は、MBO完遂尽力義務に由来するものとして「自己又は第三者の利益を図るため、その職務上の地位を利用してMBOを計画、実行したり、あるいは著しく合理性に欠けるMBOを実行しないとの義務」を負っていることはもとより(以下「MBOの合理性確保義務」)、公開買付価格それ自体はもとより、その決定プロセスにおいても公正さの確保に十分な配慮を払うことが求められる(47、48頁);

 -そうだとすると取締役は、「その決定プロセスにおいても、利益相反的な地位を利用して情報量等を操作し、不当な利益を享受しているのではないかとの強い疑念を株主に抱かせぬよう、その価格決定手続の公正さの確保に配慮すべき」義務(以下「MBOの手続的公正さの確保に対する配慮義務」)を負っている」(48頁)と、MBOを検討している会社の取締役の責務を述べた後、被告H.K.、被告H.H.及び被告社外取締役らについて、これらの義務違反の有無を判断した。

 


[11] 同社が本件MBO計画に関連して支出した本件MBO費用は下記のとおり:

 KPMG FASに対する支出:2,207万8,700円;

 メディアゲインに対する支出:2,026万7,457円(メディア対応費用);

 第三者委員会費用:1,152万0,415円;

 検証委員会費用:2,445万2,611円;

 コーポレートパートナーによる株価算定費用:1億3,104万円;

 三井法律事務所に対する弁護士報酬:8,760万1,391円;

 大江橋法律事務所に対する弁護士報酬:836万3,238円

 合計3億532万3,812円

(つづく)

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