◇SH0280◇公取委、「我が国企業における外国競争法コンプライアンスに関する取組状況について」を公表 唐澤 新(2015/04/10)

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公取委、「我が国企業における外国競争法コンプライアンスに関する取組状況について」を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 唐 澤   新

 公正取引委員会(以下「公取委」という。)は、平成27年3月27日、「我が国企業における外国競争法コンプライアンスに関する取組状況について~グローバル・ルールとしての取組を目指して~」(以下「本報告書」という。)を公表した。 

 近年、日本企業が外国競争法違反による摘発を受け、巨額な罰金や制裁金を科されたり、日本企業の役員や従業員が禁固刑を科されたりする事案が多数発生しており、日本企業の外国競争法に関するコンプライアンス態勢の脆弱性が問題となっている。本報告書は、公取委が、外国競争法に関するコンプライアンスの取組等について日本企業に対して行ったアンケート調査及びヒアリング調査の結果の報告並びに外国競争法コンプライアンスの推進に向けての提言を行ったものである。

 競争法に対するコンプライアンス態勢と一口にいっても、日本の独禁法と外国競争法とでは、カルテルに係る成立要件や違反に対する制裁、事業者が利用できる減免制度が異なる(例えば、米国においては、価格カルテルについて、我が国と異なり違反行為に係る実体法上の要件として複数の事業者による共同行為さえあれば足り、競争制限効果の程度を問わないとされている。また、EUでは、制裁金について違反事業者の全世界での売上高の10%を上限として、欧州委員会が裁量で決定することができるとされ、米国においては、違反事実Aについてのリニエンシ―が認められなくても、競争当局に未だ発覚していない違反事実Bのリニエンシ―が認められた場合、違反事実Bだけでなく、違反事実Aについても量刑の減免を受けるアムネスティ・プラス制度及びアムネスティ・プラスを利用しなかったことについて通常よりも厳しく処罰するペナルティ・プラス制度が存在する。)。それにもかかわらず、公取委の調査結果によれば、アンケートに回答した日本企業のうち、日本の独禁法についてコンプライアンスマニュアルを策定していたり社内研修の機会を設けている会社は7割程度認められる一方で、外国競争法に関してこれらの対応をしている企業は全体の2割程度しか認められなかったとのことであり、日本企業における外国競争法コンプライアンス態勢整備の遅れが浮き彫りとなった。

 公取委は、このような調査結果を受けて、①親会社及び海外傘下グループ会社による一体的対応(一体性)、②事業活動を行っている全ての国・地域の競争法を意識した広範な対応(広範性)及び③我が国法制とは異なる外国競争法制の特徴を踏まえた柔軟な対応(柔軟性)の3つの視点が海外競争法コンプライアンス態勢の構築に不可欠であるとしている。 そして、各社における具体的な取り組み例としては、コンプライアンスマニュアルの策定や社内研修の実施等「研修等による未然防止」、外国競争法内部監査の実施や国内外共通の内部通報制度の整備等「監査等による確認と早期発見」及び親会社の経営トップのイニシアティブによる迅速な対応や外国競争法に係るリニエンシー制度の活用等「危機管理」があげられている。

 外国競争法コンプライアンスを推進するための具体的な方策については、基本的には日本の独禁法コンプライアンスを推進するための方策と異なるものではないと思われるが、上記のように外国競争法の特徴に関連するリスクも存在することから、これを踏まえた対応も併せて必要となる。このため、日本企業においては、これまでどおり日本の独禁法コンプライアンスに関する取組を推進するとともに、外国競争法コンプライアンスに関する取組を推進することが求められる。

公取委ホームページより(http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h27/mar/150327_1.html

 

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