中国:日本企業に新たなチャンス? 2015年版外商投資産業指導目録について
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 若 江 悠
「外商投資産業指導目録」が、このたび、2014年10月におけるパブコメ版の公表を経て、2015年3月に2015年版が公布され、2015年4月10日より施行されることになった。同投資目録は、中国への投資を検討する外国企業にとって重要な意味をもち、投資対象の事業が「外商投資産業指導目録」において「奨励類」、「許類」、「制限類」及び「禁止類」のどれに含まれるかは、投資の基本方針に影響する。指導目録には、奨励類、制限類及び禁止類に該当する業種がリストアップされており、これらのいずれにも属さない業種は、許可類に該当するものとされている。奨励類に該当する業種は比較的許認可の取得が容易であり、輸入設備の免税等の優遇策が得られる。制限類は、一般に許認可の取得には困難が伴う。最後に、禁止類にあたればそもそも外国企業による投資は基本的にはできない。
2015年版指導目録では、制限類を79業種から38業種へ、禁止類を38業種から36業種へと減少させ、製造業、サービス分野を中心に市場開放を進めている。中国の産業構造の転換を促進する観点から、ハイテク、現代的サービス等の分野において重点的に開放が進められていることが特筆される。
大幅な規制緩和がなされた製造業では、制限類及び規制類の業種が大胆に削除された。すなわち、たばこ製造業、石油加工、コークス製造及び核燃料加工業、化学原料及び化学製品製造業、化学繊維製造業、非鉄金属精錬業、汎用設備製造業、専用設備製造業において、これまで制限類とされていた業種に関し全面的に許可類とされたし、飲料製造業については従来の制限類及び禁止類の両方がすべて廃止され、医薬品製造業も、保護植物等及び漢方製剤に関する限定的な禁止類の業種が残るほかは、制限類はすべて撤廃された。他方で、もともと政策上規定されていた、自動車完成車・業務用自動車及びオートバイの製造(中方の出資が50%を下回らない)が制限類として追加された。
通信分野も、増値電信業務に関する外資規制は継続されるが、電子商取引は除外されて許可類となり、外資比率に関する制限も受けないことになった。卸売・小売分野においては、直接販売、通信販売、インターネットの販売、音響・映像製品(映画を除く)等が制限類から削除され許可類となった。そのほか、不動産業全般、娯楽場の経営が制限類から削除された。
また、ネガティブリスト方式の徹底も一つの特徴である。指導目録のリストを超えて投資を禁止することができるのは法律法規、すなわち法律、行政法規及び地方性法規だけであり、いわゆる規章、規範性文書及び産業政策による制限・禁止はできないこととなった。
今回の改正は過去数度行われた指導目録の改正の中でも特に大規模なものであり、各日本企業は、それぞれの事業に与える影響を吟味していただきたい。