◇SH0295◇銀行員30年、弁護士20年 第21回「使用人弁護士」 浜中善彦(2015/04/21)

法学教育そのほか未分類

銀行員30年、弁護士20年

第21回 使用人弁護士

 

弁護士 浜 中 善 彦

 平成6年54歳になったとき、30年間勤務した富士銀行を定年退職したその年の10月に司法試験に合格した。翌年、転籍先である富士総合研究所(現みずほ総合研究所)を退職して2年間の修習を終えて、平成9年弁護士になった。弁護士登録をすると同時に、転籍先に復職し、使用人弁護士になった。給料は多少上がったような気もするが、復職前と大差なかったように思う。退職する前はコンサルティング部本部長という肩書であったが、復職後は相談部の部員として、法律相談担当となった。
 相談部は、以前の富士銀行経営相談所の伝統を引き継いで、富士銀行の取引先のほか、富士銀行の本支店、行員、OBからの法律、経営、税務等の相談に対応するのが仕事である。

 相談部は、支店の仕事のように定型的な業務はなく、また、預金や貸金のような業績目標もないから、比較的自由時間が多い。そのため、使用人弁護士ではあったが、弁護士会の委員会活動も何の制約もなく認めてもらった。使用人弁護士をしたのは5年間だけであったが、その間、相談業務を通じて、銀行員としてはできない経験をすることができたし、弁護士としても、いくつかの委員会の委員として、多くの弁護士と知り合うことができるなど、その後の弁護士としての仕事にまたとない経験をすることができた。

 みずほ総研になってからは使用人弁護士ではないが、相談部顧問として今でも法律相談を担当している。
 私の場合、相談は、法人の場合、主として会社法、労働法、銀行取引上の問題等がメインである。個人の場合は、やはり、相続と離婚が多い。その他、借地借家に関するものも結構ある。
 相談を受ける場合気を付けているのは、相談者は、法律問題として質問してくるが、法律解釈を求めているのではなく、どうすればいいかを尋ねているということである。どうお話していいかわからないのですがという人も少なくないが、そういう場合は、どうぞ、お構いなく話してくださいということにしている。そのうえで、相談者の訊きたいことはこうではないですかと確認することにしている。たとえば、解雇問題で相談者が知りたいのは、法律解釈ではなく、問題社員を解雇したいが、どうしたら解雇できるかということである。

 法律問題は、相談を受ければ回答はすぐわかる。よほど複雑か特殊な問題でない限り、迷うことはない。気を付けているのは、その回答を、相手の年齢や知識、経験等に応じてどう説明するかということである。法律家の仕事は、相手のいうことを法律用語に翻訳することではない。訊きたいことに的確に答えることである。
 それと同時に、すわりの良い結論を示すことである。勝って勝って勝ちまくるという弁護士もいるが、民事の問題で勝ちまくる必要はない。相手にも主張があることが多いから、主張の8割が通れば円満に解決できるという場合もある。100%勝たないと気が済まないという人もないわけではないが、そういう場合は、そこまでやると品がないと答えることもある。
 円満解決ということは、事なかれとは違う。合理的な解決方法であり、すわりの良い解決こそが求められていると思う。

以上

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