◇SH0301◇サトレストランシステムズ、責任限定契約の変更を含む定款の変更 臼井幸治(2015/04/28)

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サトレストランシステムズ、責任限定契約の変更を含む定款の変更

岩田合同法律事務所

弁護士 臼 井 幸 治

 

 サトレストランシステムズ株式会社は、平成27年4月14日、同年6月開催予定の定時株主総会において、責任限定契約の変更を含む定款変更議案を付議することを、取締役会において決議したことを公表した。

 定款変更の内容は、業務拡大のため会社の目的事項を追加すること、並びに、平成27年5月1日施行の「会社法の一部を改正する法律」(平成26年法律第90号。以下「改正会社法」という)により、責任限定契約を締結できる会社役員の範囲が変更されることに伴い、取締役及び監査役の責任免除に係る規定を変更するというものである。

 後者の変更については、改正会社法により、社外取締役・社外監査役の要件の見直しがなされたため[1]、現行会社法の下においては、社外取締役・社外監査役の要件を充足し責任限定契約によりリスクを限定することができていた役員について、改正会社法の施行により要件を充足しなくなり責任限定契約によってリスクを限定することができなくなるのでは、責任限定契約の趣旨に反し妥当ではないとの問題意識の下、社外役員であるか否かにかかわらず、業務執行を行わない取締役及び監査役について、責任限定契約を締結できるように現行会社法が改正されること(改正会社法427条1項)を踏まえた変更といえる。

 すなわち、改正会社法により、社外役員の要件を充足しないこととなる役員の中には、その知見を踏まえ監査、監督を実効的に行うことが合理的に期待される人材が相当数存在しているものと思われ、そのような人材を確保するためには、現行会社法の改正にあわせ、責任限定契約を締結することができる役員の範囲を、社外役員から業務執行を行わない取締役及び監査役にまで広げるべく、株主総会において定款変更を行った上、これら役員との間で責任限定契約を締結する必要がある。改正会社法施行前の従前の実務においては、親会社の役員あるいは従業員が子会社の社外監査役に就任している例は相当数存するものと思われ、このような会社においては、サトレストランシステムズ株式会社と同様の定款変更を行う必要があり、実際にも、平成27年4月15日にはダイハツ工業株式会社が、同月16日には株式会社ファミリーマートが、同年6月開催予定の定時株主総会において、責任限定契約の変更のための定款変更議案を付議することを、取締役会において決議したことを公表している。

 議決権行使助言会社であるInstitutional Shareholder Services Inc.が平成27年2月1日に施行した「2015年版日本向け議決権行使助言基準」において、業務執行を行わない取締役及び監査役に対する責任限定契約を締結できるようにするための定款変更につき原則として賛成することが推奨されていることもあり、今後も、株主総会において定款変更を行った上、業務執行を行わない取締役及び監査役との間で責任限定契約を締結する会社は相当数に上るものと思われ、その動向が注目される。

 また、社外取締役による業務執行取締役の監督の実効性を図るため、社外取締役の員数を2名以上とする会社も増えるものと思われ、今後は、社外取締役の員数を2名以上とするための定款変更、及び定款で定めた社外取締役の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の社外取締役を選任する会社が増えることも予測される。

 

責任限定契約を締結できる役員

現行会社法

改正会社法
(「会社法の一部を改正する法律」(平成26年法律第90号))

1 社外取締役
 

2 社外監査役

   1 取締役の内、業務執行取締役(改正会社法2条15号イ)、
     執行役、支配人、その他の使用人でない者

   2 監査役

 

 



[1] 社外取締役の要件には、株式会社の親会社等の取締役、執行役、支配人その他の使用人、兄弟会社の取締役(社外取締役を除く)、執行役、支配人その他の使用人(業務執行取締役等)でないことが追加され(改正会社法2条15号ハニ)、取締役、執行役、支配人その他「重要な」使用人の近親者(配偶者又は2親等内の親族)でないことも要件として追加され(同条15号ホ)、社外監査役の要件には、これらに加えて親会社等の監査役でないことが追加された(同条16号ハニホ)。

(うすい・こうじ)

岩田合同法律事務所弁護士。2001年慶應義塾大学卒業。2006年弁護士登録。メガバンク及び大手総合商社法務部への出向等、企業における実務経験も豊富。企業法務全般、訴訟紛争解決、組織再編、再生可能エネルギーに関連するファイナンス組成等、幅広い分野に対応。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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