◇SH0316◇消費者契約法専門調査会のポイント(第10回) 児島幸良/須藤克己(2015/05/19)

未分類

消費者契約法専門調査会のポイント(第10回)

弁護士 児 島 幸 良

弁護士 須 藤 克 己

 平成27年5月15日、内閣府消費者委員会において、第10回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、すべて報告者らの私見である。

1 配布資料

 以下の資料が配布された。

  資料1   個別論点の検討(4)―不当条項に関する規律①―(消費者庁提出資料)

  資料2   山本健司委員提出資料

  参考資料1 参考事例(消費者庁提出資料)

  参考資料2 資料1の概要(消費者庁提出資料)

  参考資料3 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案新旧対照条文(抜粋)

2 議事内容

 消費者庁加納消費者制度課長から、資料1に基づいて、以下の論点ごとに説明がなされ、各論点についての審議が行われた。

(1)不当条項に関する規律(1)

  • 事業者の損害賠償責任を免責する条項(第8条)
  • 損害賠償額の予定・違約金条項(第9条第1号)
  • 不当条項の一般条項(第10条)

 なお、今般の民法改正で瑕疵担保責任が契約責任であることが明確になったことに伴い、同改正に合わせ消費者契約法第8条第1項第5号を削除する改正案(民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案)が説明された(参考資料3)。現在の消費者契約法では、瑕疵担保責任について、「全部」を免責する場合のみ規定されていた(同法第8条第1項第5号)が、改正案では、同号が削除され、瑕疵担保責任の免責条項については、契約責任の免責条項に関する同項第1号及び第2号が適用されることとなる。

3 審議

 (1)事業者の損害賠償責任を免責する条項(第8条)

  • 「人身損害の責任を一部免責する条項」について、人身損害については故意・重過失のみならず軽過失を一部免責とする条項を無効とするか(甲案)、原則として無効としつつ、合理席がある場合は例外的に有効とするか(乙案)、現行法を維持するか(丙案)、3案が示され、甲案に対して複数の委員から賛成の意見があったが、改正の意味が分からないので現行法のままで良いのではないか(丙案支持)との意見や、免責条項を約款や契約等で定めている実例(例えば、陸運や海運)を実態調査し、確認してみるべきではないかとの意見もあった。
  • 「「民法の規定による」不法行為責任を免除する条項」について、事業者の不法行為責任を免除する条項について、「民法の規定による」という文言を削除する等により、免除の対象となる不法行為責任を民法以外の規定によるものにも拡張するという考え方について審議されたが、委員からはとくに異論がなかった。

 (2)損害賠償額の予定・違約金条項(第9条第1号)

  • 損害賠償額の予定・違約金条項について、消費者が「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」を立証するのは困難ではないかとの視点から、立証責任の転換規定を設ける案(甲案)に複数の賛成意見があった。他方、甲案に反対し、「「同種の事業を行う通常の事業者に生ずべき平均的な損害の額」を原則としたうえで、「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」がより高くなることを当該事業者が主張・立証した場合には、これを超える部分が無効となる案(丙案)を支持する意見もあった。また、甲案に対する反対意見の中には濫訴の懸念を指摘するものもあったが、これに対し、事業者側の契約条項の工夫で濫訴は避けられるのではないかとの反論があった。裁判所による資料提出命令の新設(乙案)については、効果が分からないという意見があった。
  • 委員から、消費者庁に対し、「平均的な損害の額」という概念について、たとえば「損害」に逸失利益が含まれるか否かという点について質問があり、「損害」には逸失利益が入る場合も入らない場合もあるとの回答があった。

 (3)不当条項の一般条項(第10条)

  • 現行法の「民法 、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」という要件(前段要件)について、最高裁判例を踏まえ「消費者契約の条項であって、当該条項がない場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重するもので」と修正する案が示されたが、委員から「(このような表現だと)問題となる契約の中心的条項に意図せぬ影響を及ぼす可能性はないか」との指摘があり、条項案を再検討することとなった。
  • 「民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」(後段要件)について「当該条項が平易かつ明確ではないこと」を重要な判断要素にする考え方が示されたが、委員から、「平易」「明確」以外の重要な判断要素はないのかとの意見や、「平易かつ明確であれば不当な内容でも有効となるとの誤解」が生じないかとの意見があった。また、委員から、後段要件から「民法第一条第二項 に規定する」という文言を削除してはどうかとの意見もあった。

4 その他

 次回開催予定:平成27年5月29日(火)16時~

タイトルとURLをコピーしました