◇SH0333◇札幌地裁、セクハラ・パワハラによる原告の損害賠償請求を一部認容 加藤真由美(2015/06/04)

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札幌地裁、セクハラ・パワハラによる原告の損害賠償請求を一部認容

                            岩田合同法律事務所

                             弁護士 加 藤 真由美

 

 病院や老人保健施設を運営する法人において介護員として勤務していた女性が、同法人の実質最高責任者である男性及び自身の上司に当たる看護部次長の男性2人及び法人に対し、セクハラ・パワハラを理由とし、1000万円の損害賠償を請求していた事案で、平成27年4月17日、札幌地方裁判所において、セクハラ・パワハラを行ったとする2名及び当該法人に77万円の損害賠償を命じる判決があった。裁判所は、被告らが、妊娠した原告に対し、想像妊娠だとか、中絶という方法もあるだとか発言した行為や、それまで一人の職員で担当させていなかったサクション瓶(吸入した痰を入れる容器)の清掃等を原告だけに命じていた行為が、原告の人格権を侵害すると判断した。

 裁判所が認定した事実によれば、この法人の実質責任者は、原告が自身と同じ職場で働き始め、接点を持つようになってから、約7か月間、自身の部下であり共に被告となる男性と共に、原告を頻繁に誘って食事に出かけたり、高価な衣服を買い与える等していたところ、原告がそういった誘いに応じなくなった頃から、被告らの問題となる行為が始まったということである。裁判所は、これら食事や贈り物といった行為自体は違法とまで認定できないが、その後の問題となる行為の違法性を基礎づけるものと評価している。

 近時のセクハラ・パワハラが認定された裁判例の一部を表にまとめたが、深刻な被害内容であり、なぜ訴訟に発展する以前に防止できなかったのであろうかと思われるものもある。

平成25年1月30日 東京地裁
(ウエスト・ロー)

認容総額 200万円

男性上司が女性部下に対し、業務上の必要がないのに深夜度々電話をかけ、会社グループの業務に属しない作業を指示し、これに従わない当該女性部下を怒鳴る、お茶出しが遅いとして他の上司や同僚らの面前で「お前は子宮でものを考えているんだよ。」「そんな人間はいらないんだよ。」等と侮辱的発言をして怒鳴る、当該女性部下やその上司、同僚らに対し、「Xさんがしたいのは家庭に入ることです。会社での行動は、すべて女性のそれであり、注意力も業務上のそれも子宮に従っています。」等と侮辱的なメールを送信していた。

平成24年6月15日 岐阜地裁御嵩支部
(労働判例ジャーナル8号12頁)

認容総額 11万円

市の民生児童委員代表が市の職員に対し、懇親会の席で、臀部を触った。

平成24年6月13日 東京地裁
(労働判例ジャーナル7号24頁)

認容総額 200万円

原告の直属の上司が、原告に好意を持ち、継続的に、性的発言をしたり、執拗に性行為を迫り、強引に性交渉に応じさせ、かつ原告が拒絶すると原告に業務を与えないなどの嫌がらせをしていた。

平成21年1月28日 東京地裁
(ウエスト・ロー)

認容総額 110万円

病院の管理栄養士が、その上司から継続的に、「もうあんた要らないよ」「私いじめるなら徹底してやるよ。ジワジワやらないから。」「一緒にやっているとイライライライライライラしてくるのよ。」等と非難をしていた。

 

 セクハラ・パワハラは、被害者の精神的肉体的被害はもちろんのこと、それを放置すれば職場のモラルや士気低下を招くおそれがあり、ひいては職場の生産性の低下にもつながりかねない。さらに、訴訟等の法的手続に発展した場合には、加害者と共に企業までもが訴え又は申立ての対象とされることが多いところ、法的な損害賠償責任のみならず、内実が外部に伝わってしまうことにより企業のイメージダウンも避けられないだろう。

 したがって、職場におけるパワハラ、セクハラの問題をいかにして予防、そして解消するかはリスクマネジメントとして企業の重要課題の一つであり、企業によっては社外専門家を招いての定期的な研修や、相談窓口や調査チームの設置等対策を講じているところである。リスクマネジメントの観点からは、弁護士等の社外専門家と協議し、合理的なセクハラ・パワハラ対策を講じることが望まれる。

 

(かとう・まゆみ)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2005年早稲田大学法学部卒業。2007年東京大学法科大学院卒業。2008年検事任官。大阪地検、東京地検等勤務を経て、2014年4月に「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」に基づき弁護士登録、岩田合同法律事務所入所。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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