◇SH0336◇中国:自由貿易試験区に関するネガティブリストの改正 德地屋圭治(2015/06/08)

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中国:自由貿易試験区に関するネガティブリストの改正

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 德地屋 圭 治

 

 中国における自由貿易試験区は、中国経済の対外開放戦略の一環として試験的に規制緩和が行われており、このような規制緩和は将来的には中国の他の地域にも及ぼされることが想定されており、中国における外資規制等各種規制の方向性を見定める上で極めて重要である。このような自由貿易試験区における規制緩和にかかる法令の中核をなす一つとして、ネガティブリストがあるが、2015年4月8日に、国務院弁公庁は、「自由貿易試験区における外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)に関する通知」を公布し、自由貿易試験区に関するネガティブリストを改正した。本稿では、その改正の概要を紹介することとしたい。

1 ネガティブリストとは

 自由貿易試験区では、外商投資は原則として届出制が適用されており、外国投資者は原則として届出を行えば投資を行うことができるが、「ネガティブリスト」とは、届出制が適用されず、外資投資が制限され(一定の条件の下で認可される等)、又は禁止される業種のリストである。

 2014年版のネガティブリストでは139項目が記載されていたが、2015年版では122項目になっており、相当程度規制緩和が進んでいることが分かる。

2 2015年版ネガティブリスト

 2014年版と比較し、2015年版で注目すべき点は以下のとおりである。

  • 飲料、食料製造について、2014年版では米、小麦粉の加工業等への投資制限、一定の酒類への投資資源(中国側が支配株主)、緑茶生産への投資制限(中国側が支配株主)があったが、2015年版では削除。
  • 化学原料・製品製造業について、2014年版では一定の化学原料・製品の製造業への投資制限があったが、2015年版では削除。
  • 医薬製造業について、2014年版では麻酔薬品、血液製品の製造等への投資制限があったが、2015年版では削除。
  • 一般・専用設備製造業について、2014年版では400トン以下のタイヤ式、キャタピラ式の一定の建設機械への投資制限(中国側支配株主)、320馬力以下のブルドーザー等への投資制限があったが、2015年版では削除。
  • インターネット業について、2014年版ではインターネットゲーム運営業への直接間接の関与は禁止されていたが、2015年版では削除。
  • 商務サービスについて、2014年版では投資性公司の設立は、登録資本は一定の金額以上、投資者の資産総額は一定の条件などの制限があったが、2015年版では削除。
  • 人材仲介について、2014年版では人材仲介機構の設立についての制限(外資比率は70%まで、最低登録資本金額、関連分野の経験等)があったが、2015年版では削除。

 なお、関連の規則等においては、依然として2014年版ネガティブリストにおける規制と同様の規制やその他の規制が規定されていることがあり、実際の規制の状況については関連規則等の改正も確認する必要があるので、留意が必要である。

 

(とくじや・けいじ)

長 島・大野・常松法律事務所弁護士。2003年東京大学法学部卒業、2011年University of California, Berkeley, School of Law卒業(LL.M.)。2013年Peking University Law School卒業(LL.M.)。2013年4月から1年半台北に駐在して理律法律事務所(Lee and Li)に勤務し、2015年1月から中倫弁護士事務所北京オフィスに勤務している。日本企業による中国・台湾企業の買収案件等のM&Aを中心とし て、日本企業による中国・台湾進出のサポート、労務・契約紛争などの紛争解決、競争法関連の問題などを取り扱っている。

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