◇SH3286◇ベトナム:企業法の改正① 井上皓子(2020/08/31)

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ベトナム:企業法の改正①

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 井 上 皓 子

 

 2015年7月1日に施行した現行企業法(以下「2015年企業法」)の改正法は、本年6月に国会で可決され、公布された(以下「改正企業法」)。2020年中は2015年企業法が、2021年1月1日以降は改正企業法が適用される。

 企業法は、各種の企業の組織構成や事業運営等の根幹を定める法律である。改正企業法の施行にあたっては、国会通過後の文言調整に至るまで修正が繰り返され、ぎりぎりの段階まで調整が行われ、ようやく公布に至った。実務上特に注目される点は次のとおりである。

(1) 事業登録等の手続きの簡略化

 2015年企業法のもとでは、新たに会社を設立する場合の企業登録証(Enterprise Registration Certificate(ERC))の申請はすべて物理的な紙媒体によって行われる必要があった。改正企業法では、オンラインポータル上で、付属書類を含めデジタルでの提出が可能となる。すでに2015年企業法のもとでも、ERCの新規申請及び修正申請についてオンラインポータル上でのデジタル申請が開始されていたが、最終的には物理的な書面を提出しなければならなかった。改正企業法のもとでは、すべての手続きがオンラインポータルで完結することが期待される。ただし、改正企業法においては、ERCの修正については明示的に言及されていないため、修正申請もオンラインで可能か否かについては今後の政令を待つ必要がある。

 また、ベトナムでは、日本と同様に、法令上必ずしも使用することが義務付けられているわけではないものの、契約書締結等においては実務上会社印が使用されているのが通常であり、契約の成立の真正を示すという点で大きな意義を有している。この会社印について、2015年企業法においては、会社印を事前に当局に届け出る必要があったが、改正会社法のもとでは当局への通知義務は削除された。また、物理的な印鑑に代わり、デジタル署名も使用できることが明確になり、いずれも会社の正式な印鑑又は署名として使用できることとされている。

(2) 初回出資期限の延長

 2015年企業法では、企業登録証明書の発行の日から90日以内に、投資家がすべての定款資本を出資する必要があった。改正企業法においては、この原則は維持されているものの、当該90日間には、機械設備等の現物出資をする場合に必要な行政手続きや輸入、運搬等に要する時間は含まないとされ、これにより現物出資が容易となった。

②につづく

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