◇SH0356◇スカイマーク、再生計画案の付議決定に関するお知らせ 村上雅哉(2015/06/30)

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スカイマーク、再生計画案の付議決定に関するお知らせ

岩田合同法律事務所

弁護士 村 上 雅 哉

1 債権者であるイントレピッドからの再生計画案の提出

 スカイマークは、平成27年1月28日、東京地裁に民事再生手続開始を申し立て、現在民事再生手続中である。同社は、当初から国内投資ファンドであるインテグラルをスポンサーとして民事再生手続を進めており、再生計画案の提出期限とされていた5月29日に再生債務者としての再生計画案を東京地裁に提出した。他方で、同社の再生債権者であるイントレピッド・エアクラフト・リーシング・エルエルシー(以下「イントレピッド」)からも再生計画案が提出され(同計画案は、その後、6月10日付で修正された)、スカイマークの再生計画案(以下「スカイマーク案」)とともにイントレピッドの再生計画案(以下「イントレピッド案」)についても6月15日付で東京地裁から付議決定がされ、今後の動向が社会の耳目を集めている。

 民事再生において、再生債務者は再生計画案を作成して裁判所に提出しなければならないが、再生債権の届出を行った債権者も再生計画案を作成して裁判所に提出することができる(民事再生法163条1項、2項)。

 もっとも、東京地裁の破産再生部では、届出債権者から再生計画案が提出される例は極めて少ないとされている。その理由としては、届出債権者は必ずしも再生債務者の経営の内情に明るくないこともあり、現実に遂行可能性のある再生計画案を作成することが困難なケースが多いことが考えられる。再生計画案の提出を受けた裁判所は監督委員の意見を聞いたうえで、再生計画案を債権者集会の決議に付する旨の決定(付議決定)をするが、再生計画が遂行される見込みがない場合には、付議決定がなされない(同法169条1項)。今回のイントレピッド案については再生計画の遂行可能性があると判断されたものと思われる。

 実務上は、複数の再生計画案が提出された場合、再生債務者と提出債権者との交渉を主体として、場合によっては監督委員や裁判所の立会いの下での打ち合わせを実施するなどして擦り合わせが行われることもあるが、今回は、そのような調整がされなかったか、若しくは調整がつかなかったために、複数案を付議した上で債権者の投票によってどちらの再生計画案を認可するかを決定するということになったものと思われる。

2 スカイマーク案とイントレピッド案の比較

 スカイマークからのプレスリリース[1]に基づき、スカイマーク案とイントレピッド案を比較した表を本稿末尾に掲載した。両案ともに弁済率や弁済方法は同じ内容となっているとのことである。異なるのは、スカイマークが新たに出資を受けるスポンサーの内容である。スカイマーク案では、当初からスポンサーとして意向を表明していたインテグラルとANAホールディングス等がスポンサーとされているが、イントレピッド案では、インテグラルに加えて航空会社をスポンサーとする旨規定されているものの、具体的な航空会社については、複数の航空会社とスポンサー交渉を進めているとの記載にとどまっているようである。実際にスポンサーとなる航空会社が現れるかは不透明であるし、仮にこれが現れたとしても、ANAホールディングス以外の航空会社がスポンサーとなった場合にインテグラルが従前と同様の内容での支援を行うかどうかは不明である。私見としては、再生計画では第三者であるインテグラルの意思決定を拘束することができないのであるから、結局のところ、イントレピッド案の遂行可能性は低いのではないかと思料する。

 今後、イントレピッドが進めているとされるスポンサー交渉の結果として、具体的な支援表明を行う航空会社が現れた場合、イントレピッド案の内容についても弁済率を増やすなどの修正がなされるものと考えられる。その場合に、債権者の多数がイントレピッド案に票を入れて、同案が可決されたとしても、インテグラルが再生計画通りに出資を行う意向を示さなければ東京地裁により再生計画案の認可決定がされるかどうかは不透明である。今後の事態の推移が非常に興味深いところである。

 

項目

スカイマーク案

イントレピッド案(修正後)

スポンサー

インテグラル・グループ

ANAホールディングス

UDSエアライン投資事業有限責任組合(日本政策投資銀行と三井住友銀行が出資するファンド)

インテグラル

航空会社(現在、複数の航空会社と交渉を進めている)

エアラインのスポンサー

ANAホールディングス

複数の航空会社と交渉中

弁済資金の調達方法及び資金計画

スポンサーによる出資

インテグラル等による出資

※ 両案とも弁済原資や弁済率等は同じ内容となっている。

 

 

(むらかみ・まさや)

岩田合同法律事務所パートナー。2001年東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。破産手続、民事再生や会社更生などの法的整理(債権者側および債務者側の双方から関与)や私的整理などの倒産案件や債権回収案件を中心に、上場企業、非上場企業のほか地方公共団体などを依頼者とする多種多様な案件について幅広い経験を有する。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

<連絡先>

〒100-6310 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング10階 電話 03-3214-6205(代表) 

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