◇SH0357◇銀行員30年、弁護士20年 第40回「司法試験は努力すればだれでも合格できる試験ではない」 浜中善彦(2015/06/30)

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銀行員30年、弁護士20年

第40回 司法試験は努力すればだれでも合格できる試験ではない

 

弁護士 浜 中 善 彦

 司法試験は努力すれば誰でも合格できる試験だなどという無責任な発言もあるが、司法試験はそんなに甘い試験ではない。旧試験の時のように、合格率3%ほどではないにしても、合格率が4人に1人以下という現実をよく考えた上で、それでも弁護士になりたいのか、その上でどういう仕事をしたいのか、よく考えなければならない。また、弁護士資格を取ったからといって、すぐ食えるようになる保証もないのである。

 繰り返しになるが、法科大学院進学については、学部学生はいうに及ばず、とりわけ、現在会社勤めをしている人の場合はそれまでのキャリアを捨てるわけだから、現在の仕事に不満があるからとか、自分はサラリーマンに向かないからなどと安易に考えないで、慎重に検討して欲しい。

 

 法科大学院卒業後、運よく司法試験に合格できれば弁護士資格は取れるから、とりあえずの目的は達成される。しかし、合格率から見る限り、不合格の確率の方が高い。よほど自信があれば格別、不合格になった場合のことも考えておく必要がある。

 これについて参考になるのは、米倉明先生の『法科大学院雑記帳Ⅱ――教壇から見た日本ロースクール』のなかにある、「三振後の身の振り方について」という論文(随想とでもいうべきか。)である。この論文は、法科大学院の課程を修了した者が、終了後5年以内に司法試験に合格できなかった場合(この者たちを便宜的に三振者と呼んでいる。)、その人たちのその後の選択肢としてどのようなケースがあり得るかを検討したものである。米倉先生は、いくつかの選択肢を検討した結果、「三振後の人生コースはむしろ暗い展望であって、期待しない方がよいであろう」と結んでおられる。私も、30年間の銀行員としてのサラリーマン生活の実感から、この結論に同感である。

 不合格の場合、現在の境遇よりも、よりよい結果は得られないと覚悟を決めておくべきである。学生であっても、30歳近くなるのであるから、企業への就職はより困難になる。学部の学生よりも深く法律を勉強した分は評価されるはずだなどと考えてはいけない。企業はその気になれば登録したての若い弁護士をいくらでも採用できるのだから、特段の事情があれば格別、法科大学院卒業生を採用する動機などはない。現在サラリーマンをしている人たちは、それまでのキャリアを捨てることになる。もとの職場への復帰などあり得ないから、再就職先をさがすことになるが、それがどれほど大変なことかは、日常、経験的に知ってのとおりである。逆に言えば、合格についてよほど自信があるか、何が何でも弁護士になりたいという人以外は、法科大学院進学は断念すべきである。厳しいいい方のようであるが、司法試験とそれを取り巻く現実をみると、むしろ、そういう方が親切だと思う。

 

 合格者3,000人の当初目標は撤回され、政府方針では1,500人以上とされた。これに対して日弁連は、合格者1,500人を主張している。いずれにしても、客観的に見ると、今後司法試験が現在以上に合格しやすくなるという期待はできない。新規登録弁護士の就職難も知ってのとおりである。

 しかし、他方で、社会や経済構造の変化等によって、法曹界には多様な人材が求められている。司法試験受験の厳しい現状に鑑みると安易に受験を勧めることはできないが、意欲に満ちた有為な社会人、学生が積極的に法曹を目指してほしいと思うのである。

以上

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