◇SH0414◇刑事訴訟法改正案の参議院本会議における趣旨説明及び質疑 加藤真由美(2015/09/02)

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刑事訴訟法改正案の参議院本会議における趣旨説明及び質疑

                            岩田合同法律事務所

                             弁護士 加 藤 真由美

 

 刑事訴訟法改正案が、平成27年8月7日、衆議院本会議において可決され、参議院に送付されたが、同月21日、同院において、同法改正案の趣旨説明及び質疑が行われた。

 今回の改正案の内容は、①一部の対象事件について取調べの全過程の録音・録画の義務化、②合意制度の導入、③通信傍受が出来る対象事件の拡大、④裁量保釈の判断に当たっての考慮事情を明文化、⑤被疑者国選弁護制度の対象事件の拡大、⑥証拠開示制度の拡充、⑦証人の氏名及び住居についての秘匿措置等であるが、企業法務の観点から注目されるのは、②合意制度の導入であろう。

 合意制度とは、検察官が、弁護人の同意を条件に、被疑者・被告人との間で、被疑者・被告人が他人の犯罪事実を明らかにするための供述等をし、検察官が不起訴や特定の求刑等をする旨の合意をするという制度(いわゆる「日本版司法取引」)である。

 現行法では、被疑者や被告人が、「自ら」の犯行を認め捜査に積極的に協力する場合、事案によっては、検察官が情状として評価し、「裁量の範囲内で」刑事処分の程度を軽減することもあるが、検察官が、「他人」の犯罪事実を明らかにすること等を条件に、被疑者や被告人の処分の軽減を「約束する」制度は存在しない。

 合意制度が新設された背景としては、取調べに偏重しすぎであるなどといった従来の捜査への批判があり、取調べに代替する新たな効率的な証拠収集の手段を導入する必要性があったことが挙げられる。

 また、これまで、被告人に不利益な証言をする共犯者等の証人に対して、自らの刑を軽くするために、捜査機関と裏で取引をしていたのではないかとの世論の批判が向けられてきたこともあり、合意制度の新設により、検察官と被疑者や被告人、弁護人との協議手続きを明確化することで、捜査の透明性を確保する意味もあるものと思われる。

 合意制度の対象となる事件は、捜査において、犯行に関与した内部の人間からの供述が重要となる組織的犯罪等が対象とされており、企業法務と関連のあるものとしては、独占禁止法違反事件、租税法違反事件、金融商品取引法違反事件等も含まれている。

 現行法下では、カルテル等企業犯罪が発生した場合、当該企業が弁護士を用いるなどして徹底した社内調査を行い、リーニエンシーや当局への調査協力等を行い、企業に対する行政処分・刑事処分を軽減するよう当局に働きかけを行うケースが多いが、今回の改正案においては、検察官と合意のできる被疑者・被告人の中に企業が含まれていない。

 日本では、企業がそれ単体として犯罪主体として認められておらず、違反行為に及んだ役職員に犯罪が成立する場合に両罰規定に基づき、刑事責任が科せられるということになっているが、企業が協議の当事者に入ることができないまま、合意制度によって捜査協力した行為者である従業員の起訴は見送るが企業は処罰されるという余地を残していると解釈できる。

 今後、実際の運用を経て合意制度の内容が変わる可能性も考えられるが、今回の改正案において企業が直接関与する制度は設けられていない以上、今後も、企業としては、犯行を認め刑事処分を免れたいと考える場合は、社内調査の結果を当局に提供し捜査協力を行うことで起訴猶予を求めるなどの方法に拠らざるを得ないものと思われる。

 

 合意制度の流れ

 

 

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