内閣官房、個人情報保護法の概要、新旧対照表を掲載
岩田合同法律事務所
弁護士 佐 藤 修 二
本年9月3日、「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が成立し、同月9日公布された。これにより、「個人情報の保護に関する法律」(以下「個人情報保護法」という。)及び「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下「番号法」という。)が各々改正された。
個人情報保護法改正は、公布後2年を超えない時期(改正法附則1条柱書)、番号法改正は、公布後3年を超えない時期における施行が予定される(改正法附則1条6号。ただし、個人情報保護法改正のうち、後述の「個人情報保護委員会」設置に関しては2016年1月1日に施行される。改正法附則1条2号))。
今次改正は、企業実務に大きな影響を与えると見込まれる。その内容は多岐にわたり、全てを取り上げることは出来ないが、いくつかの「見どころ」を中心に概観したい。
1.個人情報保護法改正
今般の個人情報保護法改正においてビジネス上注目されるのは、ビッグデータの利活用促進のため、「匿名加工情報」の概念が設けられたことである。
すなわち、「特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたもの」(改正後個人情報保護法2条9項柱書。以下、本項において条文番号は改正後個人情報保護法のものを指す。)と定義される匿名加工情報については、個人情報保護委員会規則で定める(その内容は現時点では未定である)加工基準の遵守等の一定の規制の下で(36条各項)、その利用および第三者提供を、個人情報保護法一般の規制(本人の同意の取得等)を受けることなく行うことができるものとされた。
他方で、今次改正は、パーソナルデータ規制に関する国際的動向も踏まえ、個人情報保護の強化を図るものである点にも留意する必要がある。
その代表とも言えるのは、個人情報保護法の一元的な監督官庁として、「個人情報保護委員会」を新設することである(マイナンバーの監督官庁として設置済みの「特定個人情報保護委員会」を改組)。同委員会は、公正取引委員会などと同様に国家行政組織法3条に基づくいわゆる「3条委員会」として行政機関としての「格」は高く、規則制定権を有するなど権限も大きい。同委員会の設置により、個人情報保護法は、執行面において格段に強化されると言えよう。
また、今次改正は、規制の内容面でも、個人情報保護強化策をいくつか盛り込んでいる。その一例として、人種、信条、犯罪歴、病歴等の「要配慮個人情報」(2条3項)につき、予め本人の同意を得ないで取得することの禁止(17条2項柱書)などの規制を設けたことが挙げられる。
2.番号法改正
番号法改正は、マイナンバーの利用範囲を医療分野等へと拡大するものであるが、中でも金融機関をはじめとする企業実務に影響すると思われるのは、預金口座への付番である。すなわち、マイナンバーを利用することができる事務の範囲に、ペイオフのための検索が加えられるとともに(改正後番号法別表第1の55の2)、金融機関は、マイナンバーにより預金者情報を検索出来る状態で管理する義務を負うこととなった(改正法附則17条により新設された国税通則法74条の13の2)。
3.まとめ
来年1月1日にはマイナンバーの運用が開始されるとともに、個人情報保護委員会が活動を始める。その後に続く個人情報保護法と番号法の改正施行も含め、わが国のパーソナルデータ規制は、新時代に突入すると言える。企業としても、十分な対応を進めていく必要があろう。
<改正法のポイント>
個人情報保護法―個人情報保護と有用性の確保 |
番号法―マイナンバー利用推進 |
・個人情報の取扱いの監視監督権限を有する第三者機関として、「個人情報保護委員会」を設置 ・利用目的の変更を可能とする規定の整備、匿名加工情報に関する規定の新設など |
金融分野、医療等分野等における利用範囲の拡充 ⇒預貯金口座への付番、特定健診・保健指導に関する事務における利用、予防接種に関する事務における接種履歴の連携等 |
(内閣官房資料《http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pd/pdf/gaiyou.pdf》を元に作成)