◇SH0476◇最三小決 平成27年9月15日 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(木内道祥裁判長)

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1 事案の概要

 本件は、岡本ホテルグループを舞台にした組織的詐欺事件の上告審決定である。被告人は、岡本ホテルグループの会員制リゾートクラブの会員権販売等を目的とする会社の実質オーナーとして同社の業務全般を統括掌理していた者であるが、同社の役員及び従業員らと共謀の上、会員制リゾート施設の利用預託金及び施設利用料の名目で、平成21年9月上旬頃から平成22年5月下旬頃までの間、合計約190名の顧客から、現金合計4億円余を集めるなどした。本件では、その行為が詐欺に当たるとされ、かつ、各詐欺行為が、「団体の活動として、当該詐欺行為を実行するための組織により行われたもの」と認められるとして、平成23年法律74号による改正前の組織的な犯罪及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)3条1項9号違反(いわゆる組織的詐欺罪)に問われた。

 

2 上告趣意

 原々審、原審では、詐欺罪の成否を中心に争われたが、上告趣意では、法令違反及び量刑不当のみが主張された。判示事項に関連する法令違反の所論は、本件会社の一般の営業員や電話勧誘員には詐欺行為に加担しているという認識がなかったところ、組織的詐欺罪の成立を認めるためには、「メンバー全員が、自らその団体の活動に参加する意思を抱き、そのようなメンバー全員の意思が結合することで、犯罪組織を形成する必要がある」と解すべきであり、したがって、本件につき、組織犯罪処罰法を適用する余地はないにもかかわらず、同法を適用して被告人を懲役18年に処した原々審判決及びこれを是認した原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令違反がある、というものである。

 

3 本決定

 本決定は、リゾート会員権の販売等を目的とする会社であって、役員及び従業員らによって構成される組織により営業活動を行う本件会社が「団体」に当たること、また、リゾート施設の施設利用預託金等を集める行為が本件会社の「団体の活動」に当たることは明らかであるとし、問題は、上記行為が「詐欺罪に当たる行為を実行するための組織により行われた」ものかどうか、すなわち、「詐欺罪に当たる行為を実行することを目的として成り立っている組織により行われたといえるかどうか」に尽きるとしている。

 その上で、本決定は、被告人はもとより、本件会社の主要な構成員にあっては、遅くとも平成21年9月上旬の時点で、本件会社が実質的な破綻状態にあり、集めた預託金を返還する能力がないことを認識したにもかかわらず、それ以降も、役員及び従業員らによって構成される組織による営業活動として、施設利用預託金等の名目で金銭を集める行為を継続したとの原判決の認定事実を前提に、上記時点以降の営業活動は、客観的にはすべて「人を欺いて財物を交付」させる行為に当たることになるから、そのような行為を実行することを目的として成り立っている上記組織は、「詐欺罪に当たる行為を実行するための組織」に当たることになったというべきであるとし、上記組織が、元々は詐欺罪に当たる行為を実行するための組織でなかったからといって、また、上記組織の中に詐欺行為に加担している認識のない営業員や電話勧誘員がいたからといって、別異に解すべき理由はないとした。

 

4 説明

 (1) 組織的犯罪処罰法3条1項は、犯罪に当たる行為が、団体の活動として、これを実行するための組織により行われた場合の加重規定である。このような場合は、通常、継続性や計画性が高度で、多数人が統一された意思の下、指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務分担に従って一体として犯罪を実行するという点で、その目的実現の可能性が著しく高く、また、重大な結果を生じやすいなど、特に違法性が高いといえる。本条項は、このような犯罪を行った行為者を適正に処罰できるようにすることを目的としている(三浦守他・組織的犯罪対策関連三法の解説参照)。

 (2) 加重処罰の対象となるのは、詐欺罪に当たる行為が、「団体の活動として」、「詐欺罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとき」に限られる。「団体」の意義については、組織的犯罪処罰法2条1項に定義規定があり、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいうとされている。処罰の対象となるのは、あくまでも詐欺罪に当たる行為を実行した個人であって、団体自体の処罰を目的としているわけではないし、正当な目的を有する団体が通常行っている活動に本条項が適用されることは想定されていない。「団体の活動として」という要件に加えて、「罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとき」という要件が要求されているのは、このことを明確にするためであろう。

 (3) 以上のとおり、組織的詐欺罪の成立が認められるためには、被告人につき詐欺罪が成立することを前提に、当該詐欺行為が、「団体の活動として」、「罪に当たる行為を実行するための組織により行われた」ことを要する。本件は、リゾート会員権の販売等を目的とし、役員及び従業員らによって構成される組織により営業活動を行う会社の実質オーナーである被告人を始めとする主要な構成員らにあっては、ある時点以降、会社が実質的な破綻状態にあり、集めた預託金を返還する能力がないことを認識したにもかかわらず、それ以降も、役員及び従業員らによって構成される組織による営業活動として、施設利用預託金等の名目で金銭を集める行為を継続した事案に関するものであり、当該行為が「団体の活動として」行われたことについては、疑問の余地のない事案であったということができる。問題になり得るのは、上記組織が、元々は詐欺罪に当たる行為を実行するための組織でなかったこと、また、上記組織の中に詐欺行為に加担している認識のない営業員や電話勧誘員がいたことであり、それでもなお「罪に当たる行為を実行するための組織により行われた」といえるかどうかである。本決定は、会社が実質的な破綻状態にあり、集めた預託金を返還する能力がないことを被告人らが認識した時点以降における同社の営業活動は、客観的にはすべて「人を欺いて財物を交付」させる行為に当たることになるから、そのような行為を実行することを目的として成り立っている上記組織は、「詐欺罪に当たる行為を実行するための組織」に当たることになったというべきであるとし、上記組織が、元々は詐欺罪に当たる行為を実行するための組織でなかったからといって、また、上記組織の中に詐欺行為に加担している認識のない営業員や電話勧誘員がいたからといって、別異に解すべき理由はないとしたものである。前述したような組織的犯罪処罰法3条1項の趣旨からすれば、当然の結論であろう。

 

5 本決定の意義等

 本決定は、事例判例ではあるが、判例の蓄積の乏しい分野に関するものであり、実務家にとっての参照価値は高いと思われる。なお、組織的犯罪処罰法3条1項違反の罪に問われた事案の中には、「罪に当たる行為を実行するための組織により行われた」ことには疑問がなく、「団体の活動として」行われたといえるかどうかの方が問題となった例もある。後者については、紳士録を利用して詐欺・恐喝行為を繰り返していたグループにつき、組織的犯罪処罰法2条1項にいう「団体」に当たるとした東京高裁平成14・1・16高刑集55巻1号1頁を参照されたい。

 

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