ブラジルにおける主な法人形態
西村あさひ法律事務所
弁護士 清 水 誠
1 はじめに
中南米諸国においては、国ごとに様々な法人形態が存在する。事業会社として用いられるものとしては、概ね株式会社/Corporation型のものと合同会社/LLC型のものが存在するが、それぞれの国において典型的に用いられる法人形態は様々な事情により異なる。
本稿においては、ブラジルにおける事業会社の典型的な法人形態である合同会社(Sociedade Limitada)及び株式会社(Sociedade Anônima)の特徴について解説する。
2 ブラジルの合同会社及び株式会社の主な特徴
ブラジルの合同会社及び株式会社の主な特徴は以下のとおりである。
なお、ブラジルにおいては、財務情報の開示が原則として不要であることや機関設計が柔軟であること等を理由に、日本企業のブラジル現地法人を含め、非上場会社のほとんどがSociedade Limitadaの形を採っている。また、ブラジル税法上、Sociedade Limitada及びSociedade Anônimaのいずれも法人課税の対象となる。
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Sociedade Limitada |
Sociedade Anônima |
最低資本金 |
なし |
なし |
持分権者の責任 |
有限責任 |
有限責任 |
持分・株式[1] |
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機関 |
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総会の決議要件 |
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持分権者間契約・株主間契約 |
持分権者間契約の効力についてブラジル民法上規定はないが、多くの場合会社法が準用されると解される |
株主間契約が本店に備置されれば会社に対し対抗可、登記されれば第三者にも対抗可 |
財務情報の開示 |
原則不要 |
原則必要 |
資金調達 |
公募増資、上場、社債及び種類株式の発行等不可 |
公募増資、上場、社債及び種類株式の発行等可能 |
以 上
[1] 但し、労働・環境等の分野では、ある会社と一定の「経済グループ」に属する他の会社は連帯債務を負う場合があること、及び法人格の否認の法理により持分権者が責任を負う場合があることに要留意。
(注)本稿は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法又は現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所又はそのクライアントの見解ではありません。
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