SH0669 ブラジル労働法の基礎 清水誠(2016/05/23)

そのほか労働法

ブラジル労働法の基礎

西村あさひ法律事務所

弁護士 清 水   誠

 

1 はじめに

 ブラジルの労務は、労働者保護的色彩の強い法制や裁判所における運用、労働裁判が提起されやすい文化等から、ブラジルに進出する日本企業にとって大きな課題となっており、いわゆる「ブラジル・コスト」の一部と言われることもある。

 ブラジルにおいては、労働法制の基本原則が連邦憲法において広範に規定されているほか、労働法制に関する中心的な法令である統合労働法(Consolidação das Leis do Trabalho; CLT)において詳細に規定されている。

 

2 日本企業が留意すべきブラジル労働法のポイント

 ブラジル労働法の概要は、下記3.のとおりであるが、ブラジルに進出する日本企業が特に留意すべき特徴的な点としては、以下の点が挙げられる。

「労働経済グループ」の概念 : 企業は、同一の労働経済グループに属する他の企業がその労働者に対して負担する債務について連帯して責任を負うとされている。ここでいう「労働経済グループ」はCLT上定義されていないが、裁判例上、概ね、同一の支配株主に支配されている複数の法人又は協調する複数の法人をいうものと解釈されており、「支配」については、議決権の過半数を保有する場合に限らず、マイノリティとしての議決権保有である場合でも「支配」が認定されたケースも存在する。また、一般的に、裁判所は、同一の労働経済グループに属しているか否かの判断を、労働者保護を重視して行う傾向にある。

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