◇SH0529◇企業内弁護士の多様なあり方(第3回)-業務の性質(下) 本間正浩(2016/01/20)

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企業内弁護士の多様なあり方(第3回)

-第1 業務の性質(下)-

日清食品ホールディングス

弁護士 本 間 正 浩

第1 業務の性質

2 業務管理(承前)

 また、このような管理業務の比重は、各企業内弁護士の企業内における地位によっても異なる。

 法務部長といった管理職であると、管理・調整業務の比重は大きい。このようなシニアな企業内弁護士は、他部門と協調し、時には他部門を説得しながら、人を動かし、組織を動かし、ひいては企業そのものを動かす要素となることを求められるのである。その評価は単に法的判断の良し悪しではなく、企業の法的リスクを適切に管理し、企業活動を適法にかつ十全に行わしめたとかという「結果」で評価されるのである。

 一方で、連絡・調整といった業務の中の比較的単純なものは、企業では比較的ジュニアな社員の仕事とされるものも多く、ジュニアな企業内弁護士にその任が割り当てられることも多い。企業も組織であり、弁護士といえども組織の一員である以上は、組織運営の責任を分担するのは当然の責務である。また、このような業務を通して、企業の中における人間関係を拡大し、また、当該企業がどのように動いているのか、その動態を知ることのできる、重要な機会である。

3 組織管理

 法務部も人の組織である以上は、組織としての管理をする必要がある。企業においては権限・影響力の強弱と範囲は、組織内における地位と比例関係にある。逆に言えば、重要な仕事に関与したり、企業内における影響力を高めるためには、課長、部長、役員と「昇進」せざるを得ない。また、大規模な仕事であれば一人でこなすことはできず、「法務部」という「組織」としてことに当たらずをえない。

 ここに、組織の管理者としての業務は重要なものとなる。スタッフに対する案件の適正な配分、その業務状況の管理等、人を「使って」ことを行うことが必要になる。

 また、人事や予算・費用管理といった組織管理の仕事に手を染めざるを得ない。スタッフの採用、教育、訓練、そしてそのキャリア開発も重要な仕事である。

 このようなシニアな立場に立った場合、当該企業内弁護士は個々の案件に対して正確な法務アドバイスをしているかで評価されるのではなく、総体としての法務部の機能をいかに発揮しているかで評価されることになる。実際のところ、法務部長級の企業内弁護士の中には、このような組織管理業務が業務の多くを占めていて、法律調査とか、契約書作成といった法律家としての「現業」の割合はむしろ小さくなっている者も少なくない。

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