壱番屋、産廃業者による当社製品不正転売のお知らせ
岩田合同法律事務所
弁護士 加 藤 真由美
カレー専門店「カレーハウスCoCo壱番屋」を運営する株式会社壱番屋(以下「壱番屋」)は、産業廃棄物処理業者であるダイコー株式会社(以下「ダイコー」)に廃棄を依頼したビーフカツ等の商品が、同社によって不正に転売され、スーパーマーケットで販売されていたと発表した。
その後の報道によれば、他の食品製造会社、コンビニエンスストア等の廃棄商品も、ダイコーによって不正に転売されていた事実が認められるとのことであり、今後、多数の事業者が壱番屋同様、対応に追われることが予想される。
報道によれば、ダイコーについて、県警は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」)違反及び食品衛生法違反の嫌疑により捜査を進めているとされ、転売先である製麺業を事業とするみのりフーズ(以下「みのりフーズ」)についても、県職員が連日立入調査を行っている。
具体的な嫌疑の詳細は不明であるが、報道で明らかになった事情を前提に推察する。
廃棄物処理法12条の3第4項は、廃棄物処理を受託した者は、処分終了後、委託者の交付する廃棄物の種類や数量、処分委託者名等が記載された「産業廃棄物管理票」(通称「マニフェスト」。以下「マニフェスト」)に、環境省令で定める事項(処分者、処分終了日や場所等。廃棄物処理法施行規則8条の24)を記載した上で委託者に回付しなくてはならないとの義務を定めており、マニフェストを回付しなかった又は虚偽記載をした場合等は、行為者に対しては6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(同法29条6号)、さらに、両罰規定により、法人にも50万円以下の罰金(同法32条1項2号)が科せられる。
壱番屋は、当該不正転売の事実を知らなかったとされるため、ダイコーは、壱番屋に回付したマニフェストに、「すべて廃棄処分した」旨の虚偽記載をした同法29条違反の可能性がある。
そして、食品衛生法6条は、腐敗、変敗したもの(同条1号)や、不潔、異物の混入等の事由により人の健康を損なうおそれのあるもの(同条4号)について、販売や、販売のために製造、輸入、加工等してはならないと規定している。
本件で問題となったビーフカツ等は、異物混入により廃棄品にされたとのことであり、ダイコーがみのりフーズに、ビーフカツ等を転売した行為は、同法6条違反に当たる可能性がある。
では、本件のようなケースで、廃棄処分を委託した側の法的責任はどのようなものが考えられるか。
まず、廃棄物処理法における、委託者側の義務は概要、下記のとおり規定されている。
原則・・・自身でその産業廃棄物を処理しなければならない(同法11条) |
委託する場合・・・
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なお、上記③については罰則こそないものの、委託者には、その産業廃棄物の処理状況の確認や、処分終了までに必要な適切な措置を講ずる努力義務を定めている。そのため、産業廃棄物の処理の委託の実態が、単なる「丸投げ」であったというのであれば、当該商品を食べたことによって消費者が食中毒を起こした場合、上記努力義務違反を根拠として不法行為による損害賠償請求の対象となるおそれなしともいえない。
冒頭のとおり、本件の食品廃棄物の不正転売問題が、食品業界に広く波及していくことが考えられる中、廃棄を委託する食品については、チェックをよりしっかり行う等、事業者は、措置を検討する必要があるものと思われる。
以 上