◇SH0604◇王将フードサービス、平成28年3月11日付で取締役会評価の結果の概要を公表 別府文弥(2016/03/23)

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王将フードサービス、平成28年3月11日付で取締役会評価の結果の概要を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 別 府 文 弥

1.はじめに

 コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という。)補充原則4-11③では、取締役会の実効性に関する分析・評価およびその結果の概要の開示が要求されているが、株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2015年12月末時点)(http://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000001ei88-att/20160120-1.pdf)によれば、同原則は「実施」(Comply)率が最も低く、「説明」(Explain)を行った会社が全体の63.6%に上っており、多くの上場会社においては今後取締役会の実効性に関する評価を開始するにあたり、検討を進めている状況にあると考えられる。

 このような状況の中、株式会社王将フードサービス(以下「本件会社」という。)は、平成28年3月11日付で「当社の取締役会評価の結果の概要について」と題するプレスリリース(以下「本件プレスリリース」という。)を公表し、取締役会評価の実施手順、結果の詳細等を公表している。本稿ではその概要を紹介する。

2.評価方法

 ⑴ 評価方法の概要

 本件プレスリリースによれば、本件会社は、以下の概要で取締役会評価を実施した。

  1. ➢ 独立社外取締役会は、取締役会評価に関して以下の事項を行う。
    ① 取締役会評価に閲するスケジュールの策定
    ② 質問票の作成及び取締役への配布並びに記入済みの質問票の回収
    ③ 独立社外取締役を除く取締役へのインタビューの実施
    ④ ②・③を踏まえた取締役会評価の報告書の作成
    ⑤ 筆頭独立社外取締役による取締役会における取締役会評価の報告
  2. ➢ 取締役会は、独立社外取締役会の報告に基づき、取締役会全体の実効性についての結論を決定し、次事業年度の目標(アクション・プラン)を設定する。また、取締役会は、前事業年度に目標(アクション・プラン)を設定した場合には、それが達成できたと評価できるか否かについても取締役会で講論をする。

 ⑵ 評価主体

 本件会社においては、従前、取締役会全体の実効性についての分析・評価は行っていなかったが、当該分析・評価を行うに当たって、新たに3名の独立社外取締役を主体とする独立社外取締役会を組成し、独立社外取締役会が取締役会決議を経た「取締役会評価に関する規程」に従い、当該分析・評価を実施した。本件プレスリリースによれば、本件会社においては外部のコンサルタントによる外部評価を行うことも検討されたものの、本件会社において独立社外取締役や監査役会が健全に機能していると考えられること、外部のコンサルタントよりも取締役の方が内部の事情に精通していること等を踏まえ、自己評価による方がメリットが大きいと判断し、独立社外取締役会による分析・評価が行われたとのことである。

 ⑶ スケジュール

 実施のスケジュールについては、平成28年1月14日に各取締役に質問票を配布し、同月下旬~2月上旬にかけて質問票の集計・分析を行い、2月中旬に社内取締役へのインタビューを行った後、取締役会評価報告書を作成し、3月11日に開示を行うという比較的短期間のものであった。

 なお、本件会社の決算期は3月であり、例年6月下旬に定時株主総会が開催されている。

 ⑷ 質問内容

 質問項目は、①取締役会の構成に関する質問、②取締役会の運営に関する質問、③取締役会の議題に関する質問、④取締役会を支える体制に関する質問の4部から構成されている。質問の総数は36問であり、1~4の四段階評価で、併せて「理由・改善すべき点」を記載することとされている。質問項目のうち、上記①~③については比較的一般的な質問が多い一方、④については、CGコードの補充原則4-11③以外の原則を意識した質問が多く設けられているという印象がある。

 このように、本件会社が取締役会評価に際し、CGコードの補充原則4-11③以外のCGコードやコーポレートガバナンス全体を意識していることは、次の「3.取締役会評価の結果」で述べるとおり、CGコードやコーポレートガバナンスが本件プレスリリース「第2 取締役会評価の結果」の冒頭に言及されていることからも窺われる。なお、質問内容の詳細及び各取締役の具体的な回答内容については、本件プレスリリースを参照されたい。

3.取締役会評価の結果

 本件プレスリリース「第2 取締役会評価の結果」の冒頭では、取締役会評価の結果として、本件会社がコーポレートガバナンスを最重視する経営を実践しており、CGコードをはじめとするコーポレートガバナンスの要請を概ね満たしているとの評価がなされている。

 他方、改善すべき点として、①取締役会に提出される資料の適切性、②取締役会に提出される資料の検討時間、③中期経営計画に関する議論を十分に行うこと、④取締役・監査役へのトレーニングの機会提供が挙げられている。

4.小括

 以上のとおり、本件会社においては取締役会評価の実施手順、結果の詳細、各取締役の具体的な回答内容等を詳細に公表しており、他社において今後取締役会の実効性に関する評価及びその結果の概要の開示を行うにあたり、大いに参考になると考えられる。

以 上

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