◇SH0605◇企業内弁護士の多様なあり方(第12回)-外部弁護士との関係(下) 平泉真理(2016/03/23)

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企業内弁護士の多様なあり方(第12回)

第4 外部弁護士との関係(下)-

ベーリンガーインゲルハイム ジャパン
法務部長 ジェネラルカウンセル

弁護士 平 泉 真 理

第4 外部弁護士との関係(下)

5 企業内弁護士と外部弁護士の役割分担

 企業内弁護士と外部弁護士の役割分担について、どのようなパターンがあるだろうか。

 まず、企業内弁護士が案件処理を主導しつつ、外部弁護士に部分的関与を求める場合がある。例えば、主として企業内弁護士が契約書の作成やレビューを行い、重要性が特に高いものに限り外部弁護士の追加レビューを依頼する場合や、高度に専門的な論点が含まれるものに限り、当該法分野に詳しい外部弁護士にセカンドオピニオンを求める場合などがある。

 次に、企業内弁護士が、外部弁護士と共同で案件を分担処理する場合がある。分担の在り方は案件の規模や性質などによって様々であるが、例えば、訴訟対応の場面では、外部弁護士と企業内弁護士の双方が企業の訴訟代理人となりつつ、訴状や答弁書、準備書面などの主張書面の作成は外部弁護士が担当し、陳述書の作成など証拠の収集や証人尋問は企業内弁護士が担当するといった方法がありうる。

 また、企業内弁護士が関与する業務であっても、敢えてその主要な部分の殆どを外部弁護士に依頼(いわばアウトソース)する場合もある。例として、先に述べた特に中立性・客観性を担保する必要性が高い場合(例えば、第三者委員会、コンプライアンスホットライン外部窓口業務など)のほか、一定の作業量のある業務を一括して外部弁護士に任せることが業務上効率的な場合(M&Aのデューディリジェンス業務、欠陥製品についてのクレーム対応業務など)がある。

6 外部弁護士による案件の結果の反映

 外部弁護士による案件処理が終了した後、企業においてはその結果をどのように反映するか。

 外部弁護士が紛争を解決した場合や、交渉の末に契約を成立させた場合などは、企業は、その結果に従って、適切に権利を行使し、金銭の支払いなどの各種義務をつつがなく履行するなどして、事後処理を行う。

 また、外部弁護士が企業に向けて何らかの意見を提出した場合には、企業は、その採否について意思決定を行い、決定に従って業務を遂行する。

 さらに、終了した案件から改善点を見出し、自発的に各種取り組みを行う。例えば、不祥事などの再発防止のため、社内ルールの策定や改訂、社員教育の企画や実施などを行う。

 以上のような、外部弁護士が処理した案件の結果を反映する場面においては、企業内弁護士がその力を発揮することが期待される。企業内弁護士は、会社のビジネスや内情に精通しており、普段から会社の意思決定のプロセスに直接関わるため、いわばプロジェクトリーダーのような形で主導的役割を担うことができる。また、企業内弁護士は、弁護士資格を有し、弁護士法上の懲戒リスクにさらされ、弁護士バッヂを賭けて日々の業務を行うことから、高い職業的倫理観を有しており、案件の結果得られた教訓を、会社の隅々まで適切に浸透させることができると期待される。

以 上

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