◇SH0190◇インド:2013年会社法と会社法改正法案 山本 匡(2015/01/20)

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インド:2013年会社法と会社法改正法案

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 山 本   匡

 

1 2013年会社法の施行

 インドでは、2013年8月と2014年4月の2段階に分けて、2013年会社法(Companies Act, 2013)の大部分が施行された。同法は、旧会社法である1956年会社法(Companies Act, 1956)を抜本的に改正したものである。新会社法は、2009年に明るみに出た、インド版エンロン事件といわれる、サティヤム粉飾決算事件(インド第4位の情報技術アウトソーシング会社サティヤム・コンピュータ・サービスの粉飾決算事件)等を受けて、コーポレート・ガバナンスの強化を図っていることに特徴の1つがある。例えば、従来は上場会社のみが、(旧会社法ではなく)上場契約により義務づけられていた独立取締役(日本における社外取締役に類似するもの)の選任が、新会社法では、同法自体に基づき非上場会社であっても一定の会社において義務づけられ、コーポレート・ガバナンス上の重要な役割を担わされている。また、会計監査人及び監査委員会の権限強化等も行われた。

 加えて、関係当事者間取引規制が、旧会社法に比べて著しく強化されている。具体的には、一定規模の所定の取引を関係当事者と行う場合、これが通常の事業の過程において行われるものであり、かつ独立当事者間取引である、という例外要件を充足しなければ、当該取引を行うためには、取締役会の承認及び株主総会特別決議(75%以上の多数による決議)による承認を要する。そして、株主総会においては、関係当事者に該当する株主は議決権を行使することができない。通常、多数派株主が関係当事者に該当することが多く、その場合、少数株主のうちの25%超の議決権を有する者が反対すれば、関係当事者間取引を行うことができなくなる。インドでは、プロモーター(promoter)と呼ばれる会社の支配者(典型例として、創業者やその親族等)が、少数株主の利益を犠牲にしつつ、自己(またはその親族等)の利益を図ることが珍しくない。上場企業であってもいわゆるオーナー企業が多く、このような悪弊が見られることがあるため、対処しようとしたものである。世界銀行が公表している2015年のDoing Business Ranking(http://www.doingbusiness.org/rankings)の少数株主保護の項目において、インドは189カ国中第7位にランクされ、2014年の第21位から大きくランクアップした(ちなみに、日本の同項目におけるランキングは第35位)。

 その他、事業年度を原則として4月1日~3月31日とすることや、世界的に珍しいと思われる、一定の会社におけるCSR支出の義務化等も新たに定められた。

2 2014年会社法改正法案

 上記のようにコーポレート・ガバナンスや少数株主保護を強化した2013年会社法であるが、条項によっては規制内容が不明確であることや、ビジネス上の要請・ニーズを無視した極めて厳格な規制があること等から、一定の条項については評判が芳しくない、または強い批判があるところがある。例えば、上記の関係当事者間取引規制は、規制が過度に厳格であることや規制内容に不可思議な点があることも相俟って、そういった評判が芳しくないものの1つである。

 こういった批判等を受けて、2014年会社法改正法案(Companies (Amendment) Bill, 2014)が、2014年11月から始まった議会のWinter Sessionに提出された。

 同法案には様々な改正事項が含まれているが、その中でも、関係当事者間取引規制の緩和が注目されていた。すなわち、2013年会社法では、上記の通り、一定の例外を満たさない関係当事者間取引は、株主総会特別決議による承認を必要としていたが、これを、普通決議に緩和しようとしていた。

 同法案は議会に提出され、下院(Lok Sabha)では承認されたものの、上院(Rajya Sabha)が、宗教問題に端を発する政治的問題で空転したため、結局、上院で承認されないままWinter Sessionが終了してしまった。もっとも、同法案は廃案となってしまったわけではなく、次回の議会で継続して審議されるようである。今後の改正に期待したい。

 

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