◇SH0625◇最高裁、裁判所における不適切な郵便切手管理に関する調査結果を公表 唐澤 新(2016/04/12)

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最高裁、裁判所における不適切な郵便切手管理に関する調査結果を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 唐 澤   新

 

 最高裁は、平成27年7月に東京地裁及び東京簡裁(以下「東京地簡裁」という。)において、当事者から予納された郵便切手が手続内においてすべて使用されなかったにもかかわらず返還されなかった等不適切に管理されていたことが判明したことを受け、予納郵便切手として適切に管理されていない記録外の郵便切手(以下「記録外郵便切手」という。)の有無及び記録外郵便切手の不適切管理、私的流用の有無等について全国的な調査(以下「本件調査」という。)を行ってきたが、この度かかる調査の結果が公表され、東京地簡裁以外の裁判所においても不適切な郵便切手の管理が行われていたことが明らかとなった。なお、本件調査により、事件処理と関係なく裁判所職員が記録外郵便切手を私的に流用した事実は確認されなかったとのことである。

 本件調査により新たに751万7756円分の記録外郵便切手の存在が確認され、既に発覚していた東京地簡裁における記録外郵便切手である161万3963円分を加えると、全国的に約900万円分の予納郵便切手が不適切に管理されていたことになるが、記録外郵便切手が発生することになった経緯は概要以下の2つに分けられる。

  1. ① 債権差押命令手続において、第三債務者に対して差押えに係る債権の存否や額等について回答を求める陳述催告(民事執行法147条1項)を行う際に、裁判所は、郵便切手を貼付した返信用封筒を第三債務者に交付しているところ、第三債務者が自ら郵便切手を用意したため返信用封筒(及びそれに貼付された郵便切手)が未使用の状態で裁判所に返送されたにもかかわらず、当該郵便切手を債権者に返還せずにそのまま保管していた事例(下図事例①)。
  2. ② 裁判所は、当事者から事件単位で郵便切手の予納を受けるにもかかわらず、債権差押命令手続において法務局に対して支払委託書(供託規則30条1項参照)を送付する際に、または公示催告手続において印刷局に対して官報公告申込書を送付する際に、複数の事件について1通の封筒でまとめて送付し、これにより使用されずに残った郵便切手を債権者または申立人に返還せずにそのまま保管していた事例(下図事例②)。

 予納郵便切手は、当事者等から国に対して消費寄託されたものであり、物品管理法2条1項の「物品」に該当すること、同法の特則である民事訴訟費用等に関する法律により、予納郵便切手の管理に関する事務は最高裁の指定する裁判所書記官が取り扱うものとされることから(民事訴訟費用等に関する法律29条)、裁判所書記官は、物品管理法の趣旨及び予納者の寄託の趣旨を踏まえた上で、国の物品として適正かつ厳格に予納郵便切手を管理しなければならない。そして、かねてより通達に基づき郵券袋を事件記録につづり込む方法により、予納郵便切手は「事件単位」で管理されるべきものとされてきたのであるから、実際には費消されなかった予納郵便切手を費消されたものとして扱い予納者に返還しないということはおよそあってはならないことであり、また、予納郵便切手を、予納者の寄託の趣旨に反し、他の事件との関係でも併せて使用することも許容されるものではない。

 予納郵便切手が手続内においてすべて使用されなかった場合、予納者に返還される必要があるが、過去に裁判所に郵便切手を予納した者において、当該事件に関する記録外郵便切手の有無及びその金額を特定することは事実上不可能であり、裁判所においても同様であると考えられる。そこで、本件調査により予納郵便切手の不適切利用が認められた、またはそのおそれがある部署において、平成17年4月1日から平成27年7月31日までの間(東京地簡裁の3部署については、平成17年4月1日から平成25年12月31日までの間)に、所定の手続(配当事件、債権差押命令事件等)に関する費用として郵便切手を予納した者は、裁判所名、事件番号、申立年月日、当事者等により事件を特定して裁判所に対して予納した郵便切手の残額と認められる金額について、金銭の支払を請求することができる。返還申出の期限は平成28年8月31日となっているが、手続の詳細については裁判所ホームページを参照されたい。

 

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