◇SH0627◇厚労省、長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表 羽間弘善(2016/04/13)

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厚労省、長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 羽 間 弘 善

 

 厚生労働省は、平成28年4月1日、平成27年4月から12月までの間に実施された長時間労働が疑われる事業場に対する労働基準監督署による監督指導の実施結果を取りまとめて公表した。

 長時間労働が疑われる事業場に対する労働基準監督署による監督指導(以下「本監督指導」という。)は、長時間労働の削減に向けた政府の取り組みの一環として行われているものであるが、そもそも長時間労働削減に向けた取り組みは、平成26年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014において「働き過ぎ防止のための取組強化」が盛り込まれ、「長時間労働を是正するため、法違反の疑いのある企業等に対して労働基準監督署による監督指導を徹底するとともに、「朝型」の働き方の普及や長時間労働抑制策等の検討を行う」ことが明記されたことを機に始まり、平成26年9月30日には厚生労働大臣を本部長とする長時間労働削減推進本部が設置され、現在は、厚生労働省をあげて実施されるに至っている。

 労働時間に関しては、労働基準法において、原則として、使用者は労働者を1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならず、労働者には週1回以上の休日を与えなかければならないと規定されており、例外的に、労働基準法36条に定めるいわゆる「36(サブロク)協定」を労働組合又は労働者の過半数を代表する者と締結し、労働基準監督署に届けた場合には、36協定の範囲内で時間外労働又は休日労働が可能とされている(同法32条、35条1項、36条1項)。

 今回発表された平成27年4月から12月までの本監督指導の実施結果によれば、監督指導を行った事業場のうち半数を超える事業場で労働基準法に抵触する違法な時間外労働が確認され、違法な時間外労働を行っている企業の存在が多く確認される結果となった。

 このような結果を踏まえ、平成28年4月1日に今後の長時間労働対策を議案とする長時間労働削減推進本部の会議が開催された。当該会議では、今後、法規制の執行を強化することが示された(以下の図表は同会議において提示された資料(抜粋)である。)。具体的には、労働基準監督署による本監督指導は1カ月当たり100時間を超える残業が行われた疑いのある事業場を対象としていたが、今後は1カ月当たり80時間を超える残業が行われた疑いのある事業場に範囲を拡大すること、そして、現在は東京労働局と大阪労働局にのみ過重労働撲滅特別対策班[1]が設置されているが、全ての労働局に、長時間労働に関する監督指導等を専門に担当する「過重労働特別監理官」(仮称)を各1名配置し、監督指導・捜査体制の強化並びに全国展開を行うとのこと等が示された。

 長時間労働削減については、安倍晋三総理大臣自らが、本年3月25日に開催された「一億総活躍国民会議」において重点的に取り組む旨を表明しているところでもあり、今後は、規制強化、監督指導の厳格化が見込まれる。また、それに伴い、長時間労働や違法な時間外労働を実施している企業は、いわゆる「ブラック企業」などと称されレピュテーションの低下を招くことも予想され、企業経営者としては長時間労働削減に向けて取組む必要性を改めて認識する必要がある。

 長時間労働削減推進本部は、長時間労働削減に向けた取組み事例についても広く公表しているため、参考とされたい。

 (参考:http://work-holiday.mhlw.go.jp/index.html

以 上

 


[1] 長時間にわたる過重労働が行われ、労働基準関係法令に違反する悪質事案等の捜査等を担う専従チームであり、平成27年1月より設置された。

 

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