◇SH0655◇企業内弁護士の多様なあり方(第18回)-企業内弁護士の「待遇の決め方」(上) 片岡詳子(2016/05/11)

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企業内弁護士の多様なあり方(第18回)

-第7 企業内弁護士の「待遇の決め方」(上)-

ユー・エス・ジェイ法務部長

片 岡 詳 子

第7 企業内弁護士の「待遇の決め方」

1 待遇の決め方―総論

 日弁連が2009年9月から10月に行った現役企業内弁護士に対するアンケート結果[1]によると、企業内弁護士の待遇の決め方は、大きくは、次の2つの方法によっている。ひとつは、①一般の従業員(資格を持たない他の法務部員)と同じ社内規程に基づいて決定されるというもの、もうひとつは、②個別の交渉に基づく年俸制により決定されるというものである。

 ①の応用として、一般の従業員と同じ社内規程に基づきつつ、①a「資格手当」による優遇(多くの場合、月1~2万円程度のあまり高額でない金額)があるもの、①b昇進・昇給面で優遇があるもの、がある。①bは、当該企業において、制度としてあるいは規程上、そのような優遇措置を設けているというより、当該企業に所属する企業内弁護士が1名かごく少数である故、待遇の工夫として、事実上、そのような措置を講じている場合が多いようである。

 ①とその応用は、社内に年功序列型の賃金体系が確立されている国内の大企業に多く、②は外資系企業及び国内のベンチャー企業に多い。②を採用している企業は、企業内弁護士以外の従業員の一部(例:上級営業職や上級経理職)についても個別の交渉に基づく年俸制によって待遇を決めている場合が多く、弁護士のみを特別扱いしているということではない。その意味では、①を採用している国内の大企業も、②を採用している外資系企業も、企業の従業員に対する待遇の考え方をそのまま企業内弁護士に適用しているだけであり、結局「一般の従業員と同じ」ともいえる。

 なお、あまり多くはないが、③弁護士専用の社内規程が制定され、それによって待遇が決定される例もある。これは、ある程度企業内弁護士が定着し、実績をあげた企業において、①によることの不都合(後述する)を回避するために、独自のルールが制定されることによる。

 


[1] 古いデータであるがこれ以降日弁連によるアンケート調査は行われていないようである。日本組織内弁護士協会は「企業内弁護士に関するアンケート」を毎年実施しているが当該項目は質問項目に入っていない。

 

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