世耕経産相、「未来志向型の取引慣行に向けて」を発表
−−サプライチェーン全体にわたる取引環境の改善
世耕経済産業相は、9月15日、親事業者と下請事業者双方の「適正取引」や「付加価値向上」、サプライチェーン全体にわたる取引環境の改善を図ること等を目的とした「未来志向型の取引慣行に向けて」を発表した。
下請取引については、同日、安倍首相が日商の通常会員総会で、「下請取引の条件改善にも、全力で取り組みます。……一連の調査で明らかになった取引慣行の課題が現実に改善されるよう、下請法や独占禁止法の運用を強化し、業種別のガイドラインを充実させます」と表明している。世耕経産相は、日本経団連および日本自動車工業会との懇談会において「未来志向型の取引慣行に向けて」を発表し、日本自動車工業会に対して「自動車産業の適正取引の推進のための自主行動計画の策定および付加価値向上のための先進的な取組を推進していただきたい」旨、要請を行った。これに対して日本自動車工業会の西川会長から、「当会として、自主行動計画の策定を行う」旨、言及があったものである。
「未来志向型の取引慣行に向けて」の内容を見ると、まず3つの基本方針として、以下を挙げている。
- ⑴ 親事業者による不適正な行為に対して厳正に対処し、公正な取引環境を実現する。
- ⑵ 親事業者・下請事業者双方の「適正取引」や「付加価値向上」につながる望ましい取引慣行等を普及・定着させる。
- ⑶ サプライチェーン全体にわたる取引環境の改善や賃上げできる環境の整備に向けた取組みを図る。
そして、「本来は親事業者が負担すべき費用等を下請事業者に押しつけることがないよう徹底していく」として、次の3つの重点課題を示している。
- ・ 価格決定方法の適正化(一律○%減の原価低減を要請される、労務費上昇分が考慮されない、等)
- ・ コスト負担の適正化(量産終了後に長期間にわたって無償で金型の保管を押しつけられる、等)
- ・ 支払条件の改善(手形等で支払いを受ける比率が高い、割引コストを負担せざるを得ない、等)
その上で具体的には、業種横断的なルールの明確化・厳格な運用を行うこととして、次の4事項を挙げている。
- ・「下請法の運用強化(運用基準の改正)」については、不適正な原価低減活動、金型の保管コストの押しつけ等の違反行為事例を追加し、違反情報の収集強化と未然防止を図る。(公取委に提案)
- ・「適正取引、付加価値向上の促進(下請振興法の振興基準改正)」については、取引先の生産性向上への協力、労務費上昇分に対する考慮、サプライチェーン全体での取引適正化等、望ましい取引慣行を追記し、親事業者に要請する。(年内改正)
- ・「下請代金の支払条件の改善(通達、振興基準の見直し)」については、現金払いの原則、割引料負担の一方的な押しつけの抑制、手形等の支払期間の短縮等、下請代金の支払条件の改善を親事業者に要請する。(年内見直し)
- ・「下請法の調査・検査の重点化」については、原価低減・金型・手形等に重点をおいて、下請代金法の書面調査の充実、特別立入検査を実施する。(年度内に実施)
さらに、業種別の自主行動計画の策定等に関しては、㈰下請ガイドライン策定業種のうち、まずは幅広い下請構造をもつ自動車等の業種に対して、サプライチェーン全体での「取引適正化」と「付加価値向上」に向けた自主的な行動計画の年度内策定と着実な実行を要請するとともに、フォローアップを行うとともに、㈪業種別下請ガイドラインを年度内に改訂し、親事業者と下請事業者の連携・協力に係るベストプラクティスを追加することとしている。
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○ 日本商工会議所通常会員総会での安倍総理(9月15日)
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201609/15soukai.html -
○「未来志向型の取引慣行に向けて」を発表しました(9月15日)
http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160915002/20160915002.pdf -
○ 未来志向型の取引慣行に向けて(9月15日)
http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160915002/20160915002-2.pdf