◇SH0681◇企業内弁護士の多様な在り方(第21回)-第8 企業内弁護士の「仕事の内容」(上) 吉田哲郎(2016/06/02)

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企業内弁護士の多様な在り方(第21回)

-第8 企業内弁護士の「仕事の内容」(上)-

明治安田生命保険法務部上席法務役

弁護士  吉 田 哲 郎

第8 企業内弁護士の「仕事の内容」

1  はじめに

 企業内弁護士の仕事の内容は、①法務部門がいかなる職責を負っているか、すなわち法務部門に求められている機能は何かということと、②企業内弁護士の労働契約上の職務内容、すなわち企業内弁護士がまさしく弁護士業務を行う者として採用されているか、通常の従業員(たとえば「総合職」など)と同様の仕事を行う者として採用されているか、またはその中間的なものとして、通常の従業員ではあるが専門職的な仕事を行う者として採用されているか等により、さまざまなバリエーションを伴って規定されるように思われる。

 本稿では、まず前者の観点から企業法務の仕事の内容を整理する。そして最後に後者の観点から、企業内弁護士の企業法務の仕事への関与のあり方を整理することで、企業内弁護士の「仕事の内容」を俯瞰する。

2  企業法務の仕事の内容―中核的な仕事と拡大された仕事

 企業法務の仕事の内容についての整理の視点として、ここでは、従前から行われてきた企業法務の「中核的な仕事」と企業法務の機能拡大に伴って行われるようになった「拡大された仕事」とに区分してみる。もちろん、その中間的な形態の多様性は言を俟たない。なお、別の視点として、企業内に主たる業務遂行者(主管部署)がいてそれに対する法的アドバイスをする「支援的業務」と法務部門が自らの主管業務として行う「遂行的業務」との区別も重要であると思われるので、この視点も加味する。

(1) 中核的な仕事(その1)

 企業法務の原初的な機能は「臨床法務」(問題発生後の対応)であろうから、かかる意味での中核的な仕事は、①訴訟対応、②クレーム処理、③民事介入暴力への対応、④団体交渉への対応、⑤過誤払いにおける債権回収等となろう。

 訴訟対応は中核的な仕事であるとともに、法務部門が自らの仕事として行う遂行的業務といえよう。民事調停等の司法型ADRへの対応は中核的な仕事でかつ遂行的業務に含まれることが多いであろうが、民間型ADRや弁護士会あっせん等その他ADRへの対応は、主管部が主体となって対応するに際して側面から支援する支援的業務にとどまる場合も多いであろう。

 クレーム処理、民事介入暴力・団体交渉への対応、過誤払いにおける債権回収は、その解決困難性の程度に応じて、支援的業務から遂行的業務へと発展することとなろう。具体的には、主管部での対応が困難となれば、法務部門がクレーマーに対する書簡を作成し内容証明郵便で送付したり、民事介入暴力に対して法的手段を採ったり、団体交渉に出席して法的観点から意見を述べることで交渉当事者となったり、債権回収のための法的手段(支払督促等)を採ったりすることになる。もちろん、社外弁護士や警察当局等との連携は想定されるところである。(つづく)

 

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