◇SH2406◇金融庁、ガバナンス改革の推進で今後の検討課題を提示 (2019/03/15)

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金融庁、ガバナンス改革の推進で今後の検討課題を提示

――フォローアップ会議、議決権行使助言会社については海外の規制を紹介――

 

 「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(座長・池尾和人立正大学教授)の第18回会議が3月5日、「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討課題」を議題として開催された。

 (A)スチュワードシップについては国際的な機関投資家団体である ICGN(International Corporate Governance Network)や英国を始めとする諸外国での取組みの状況・最新動向が、また(B)コーポレートガバナンスについては役員報酬に関して報酬委員会の設置・開催状況が紹介されるとともに、これらの両分野に係る今後の検討課題が示されている(なお第16回・第17回会議について、SH2235 コーポレート・ガバナンス改革の深化に向けた取組みの現状が明らかに(2018/12/06)」およびSH2324 改訂ガバナンス・コードへの最新の対応状況が明らかに(2019/02/08)既報)。

 また、仮称「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」の策定に向けて審議を進める経済産業省からは「グループガバナンス」「上場子会社のガバナンス」を軸に問題意識や対応の方向性を取りまとめた「グループガバナンスについて(コーポレート・ガバナンス・システム研究会での検討)」と題する資料が明らかにされており、適宜参考とされたい(実務指針の審議の状況について、SH2369 経産省、「グループ・ガバナンス・システム」で実務指針の骨子案を提示 (2019/02/28)既報)。

 上記(A)スチュワードシップを巡って今般個別に取り上げられたのは(1)運用機関、(2)企業年金等のアセットオーナー、(3)議決権行使助言会社、(4)運用コンサルタントの4者。「運用機関や年金基金等のアセットオーナーが、投資家と企業の『建設的な対話』の充実を図り、更なるスチュワードシップ責任を果たすため、今後検討を進めていく必要があると考えられる項目としてどのようなものがあるか」との観点から、当日の会議において「検討課題(案)」として示されたのは「運用機関の開示情報の拡充(個別の議決権行使結果、スチュワードシップ活動報告)」「企業年金のスチュワードシップ活動の後押し」「議決権行使助言会社」「その他」の4点であった。

 上記(1)運用機関については現状、スチュワードシップ活動状況に関する機関投資家ごとの記載内容の差異が大きいことが指摘されている。議決権行使結果の個別開示についても、日本株投資残高を有する96社のうち今後も公表予定なし:38.5%、今後公表するかどうか検討中:11.5%と、公表していない運用機関が半数にのぼっている(日本投資顧問業協会によるアンケート結果を出所とする金融庁作成資料による)。(2)企業年金等のアセットオーナーに絡んでは、昨年末までにわが国の計14の企業年金がスチュワードシップ・コードを受け入れている状況とともに、米国および欧州における「企業年金の加入者に対する情報提供制度」を紹介。

 また、約4割の機関投資家が活用しているとされる(3)議決権行使助言会社については、一部の機関投資家が「議決権行使助言会社の活用に関する具体的な公表」を実施している開示例を掲げる一方で、米国・欧州における規制状況を紹介している。欧州に関しては「EU株主権利指令(Shareholder Rights Directive)」による「開示規制」および「利益相反への対応状況等の開示」を挙げ、たとえば議決権行使助言会社に対する「開示規制」として、加盟国に対して次の7点につき毎年開示させることなどを含む規制の導入を求めているとした。①利用している方法・モデルの特徴、②主な情報源、③サービスの質およびスタッフの資質を確保するための手続、④各国市場、法規制、対象企業に係る個別事情の考慮の有無・内容、⑤市場ごとの議決権行使助言方針の特徴、⑥対象企業・ステークホルダーとの対話の有無・内容、⑦利益相反管理方針。

 上記(4)運用コンサルタントについては「運用コンサルタントが運用機関のスチュワードシップ活動を十分に把握していないのではないか」とする指摘があることを示したうえで、英国競争・市場庁(CMA)により年金基金受託者との関係で本年6月ころから運用コンサルタントに課されることになる予定の命令(order)原案について、その概要を紹介した。

 上記(B)コーポレートガバナンスを巡りなお課題が示されているのは、役員報酬に関するガバナンスについて。「報酬委員会の設置が進んでいる一方で、実質的な独立性や開催頻度の点に課題も」「報酬に関する開示の内容を報酬委員会の審議事項とする企業はなお少数」といった問題意識が明らかにされており、また、海外機関投資家からは「業績と報酬との関係性、報酬の算定方法等について、詳細な情報」「各取締役の年間報酬総額(現金・株式報酬を含む)や、株式報酬制度の概要の開示」を望む意見が寄せられているという。

 

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