◇SH0490◇消費者契約法専門調査会のポイント(第22回) 児島幸良・須藤克己(2015/11/30)

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消費者契約法専門調査会のポイント(第22回)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 児 島 幸 良

弁護士 須 藤 克 己

 

 平成27年11月27日、内閣府消費者委員会において、第22回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、すべて報告者らの私見である。

1.配布資料

 以下の資料が配布された。

  配布資料

  資 料1  個別論点の検討(10)(消費者庁提出資料)

  参考資料1 消費生活相談員に対するアンケート調査(消費者庁提出資料)

 

2.議事内容

 事務局から、資料1に基づいて、以下の個別論点に関する説明があり、質疑応答が行われた。

  1. ・「勧誘」要件のあり方
  2. ・ 不利益事実の不告知
  3. ・「重要事項」(法第4条第4項)
  4. ・ 第三者による不当勧誘(法第5条第1項)
  5. ・ 取消権の行使期間(法第7条第1項)
  6. ・ 不当勧誘行為に基づく意思表示の取消しの効果

 なお、冒頭に、今後の本調査会における審議方針等について、質疑や議論が行われた(以下3.に概要を記載)。

 

3.質疑・議論の主な内容

(1)今後の本調査会における審議方針等について

  1. ・ 委員から、資料1を見る限り「今後の検討」とする論点が多いが、議論を尽くさず見送りとするのであれば反対であるとの意見があった。これに対し、事務局から、委員会の決める事項であるが「今後の検討」としても直ちに検討を打ち切るものではないと認識している旨の説明があり、続いて、河上委員長から「現時点で必要な立法政策はきちんと出していただきたい。今年度中の法改正を目指して作業をしてきたが、必ずしもそれに拘泥する必要はない。現時点で取り纏められるものをパート1として、その後引き続いてパート2を出すという方向で良いのではないか。」との発言があった。
  2. ・ 今後、本調査会では、現在取り纏め可能な論点に関する整理を行い、その後、引き続き検討すべき課題を継続審議し意見集約を図る方向で検討される方針となった。
  3. ・ なお、「不当勧誘行為のその他の類型」については次回検討されることが確認された。
     

(2)個別論点の検討

  1. (ア) 「勧誘」要件の在り方
  2. ・ 事務局から、「勧誘」要件の見直しについては文言を維持し、その解釈や個別具体的な事案における適用に委ねることとしつつ、取消しの規律の適用対象となる行為の範囲については、今後の検討課題と位置付けることとしてはどうかとの提案があった。
  3. ・ 逐条解説において、裁判例を適宜紹介しつつ、必ずしも特定の消費者に対する働きかけでなければ「勧誘」に含まれないというわけではないことを記載しておく方針に賛成の意見があった。これに関連し、契約締結の過程で消費者の意思形成をゆがめていないかという視点を意識して逐条解説で勧誘要件の説明をしてほしいとの意見もあった。
     
  4. (イ)  不利益事実の不告知
  5. ・ 事務局から、類型化による規律の在り方、事業者の主観的要件の拡張、故意の不告知による取消し等について、引き続き、裁判例や消費生活相談事例を収集・分析して検討するのが適当ではないかとの提案があった。
  6. ・ 委員から、事業者の主観的要件について故意・軽過失とすることでよいのではないかとの意見もあったが、現時点においてとりまとめられる限度として、事務局提案に大きな異論はなかった。
     
  7. (ウ) 「重要事項」(法第4条第4項)
  8. ・ 事務局から、法第4条第1項第1号(不実告知)のみを適用対象として、「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」を法第4条第4項所定の事由に追加して列挙してはどうかとの提案があった。
  9. ・ 事務局提案に対し委員から異論はなかったが、「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情」では救済できない事例もあると思うので、その他の事由についても引き続き検討課題としてほしいとの意見があった。
     
  10. (エ)  第三者による不当勧誘(法第5条第1項)
  11. ・ 事務局から、①委託関係にない第三者による勧誘において、事業者が、当該第三者が不当な勧誘をしたこと及びそれに起因して消費者が誤認又は困惑し意思表示をしていることを知っていた場合又は知ることができた場合に、消費者に取消権を認めることについては、今後の検討課題と位置付けることとしてはどうか、②また、現行法第5条第1項にいう「媒介」の意義については、当面は、文言の解釈及び個別具体的な事案における適用に委ねることとしつつ、必ずしも契約締結の直前までの必要な段取り等を第三者が行っていなくてもこれに該当する可能性がある旨を逐条解説において記載することとしてはどうかとの提案があった。
  12. ・ 事務局提案に対し委員からは明確な異論はなかったが、「第三者」の範囲について今後十分検討を進めるべきであるという意見や、「委託関係にない」という文言の解釈について今後具体的に検討すべきであるとの意見等があった。
  13. ・ 委員から、第三者による不当勧誘と民法第96条第2項との関係を示唆する意見もあった。
  14. ・ また、②について、「媒介」について逐条解説での説明を充実してほしいとの意見があった。
     
  15. (オ)  取消権の行使期間(法第7条第1項)
  16. ・ 事務局から、法第7条第1項に定める取消権の行使期間のうち、短期の行使期間を「追認をすることができる時から1年間」に伸長してはどうかとの提案があった。
  17. ・ 事務局提案に対し委員からは、1年間は短くないだろうかとの意見もあったが、事務局提案に対し積極的に反対する意見は見られなかった。
     
  18. (カ)  不当勧誘行為に基づく意思表示の取消しの効果
  19. ・ 事務局から、消費者契約法に、新民法第121条の2第1項の規定にかかわらず、消費者契約に基づく債務の履行として給付を受けた消費者は、消費者契約法の規定により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消した場合において、給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、当該消費者契約によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負うものとする旨の提案があった。
  20. ・ 事務局提案に対し委員から、明確な異論は見られなかった。但し、本論点の改正については、施行を民法改正に合わせるべきであるとの意見があった。

 

4.その他

 次回開催予定:平成27年12月11日(金)15時~

以上

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