◇SH0698◇女性の再婚禁止期間短縮に係る民法の一部を改正する法律案、可決・成立 清瀬伸悟(2016/06/15)

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女性の再婚禁止期間短縮に係る民法の一部を改正する法律案、可決・成立

岩田合同法律事務所

弁護士 清 瀬 伸 悟

 

 平成28年6月1日、女性の再婚禁止期間短縮に係る民法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)が成立し、同月7日に公布、施行された。

 同法による民法の改正(以下「本改正」という。)は、女性の再婚禁止期間を前婚の解消等の日から6か月と定める民法の規定(改正前の民法733条1項)のうち、再婚禁止期間を100日とした部分は法の下の平等を定めた憲法14条1項及び家族生活における個人の尊厳と両性の平等を定めた憲法24条2項には違反しないが、100日を超える部分については憲法14条1項及び憲法24条2項に違反するとした最高裁判決(最大判平成27年12月16日裁判所HP掲載[1])を受けたものである。

 本改正により、女性の再婚禁止期間が6か月間から100日間に短縮されたほか、女性が前婚の解消等のときに妊娠していなかった場合には再婚禁止期間に関する規定が適用されず婚姻が認められることになった。

 上記最高裁判決が100日の再婚禁止期間を認めた根拠は、女性が婚姻中に妊娠した場合には、その夫の子供であると推定されるところ(民法772条1項)、下図記載のとおり、婚姻解消等の日から300日以内に生まれた子には上記推定が及ぶ一方(民法772条2項)、婚姻成立の日から200日を経過した後に生まれた子にも上記推定が及ぶことから(民法772条2項)、婚姻解消等から再婚までの期間が100日以内の場合に、前婚の推定期間と後婚の推定期間が重複し、父子関係を早期に定めて子供の身分関係の法的安定を図ることができなくなることにある。

 なお、上記最高裁判決には、前婚の解消等の時点で妊娠していない女性等については100日の再婚禁止期間を定めた規定の適用除外の事由があるとしても不相当とは言えない旨の補足意見が付されており、本改正のうち、女性が前婚の解消等のときに妊娠していなかった場合に再婚禁止期間に関する規定が適用されず、婚姻が認められるになったのはかかる補足意見を受けたものである。

 最高裁判所が法令に対して違憲判決を出した場合は、その要旨が官報に公告された上、裁判書の正本が内閣及び国会に送付される(最高裁判所裁判事務処理規則14条)。国会は、違憲判決を受けた法令を改正する義務を負うものではなく、過去には違憲判決から20年以上の間、改正されなかった事案[2]も存在する。しかし、近年では、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする規定を違憲とする最高裁判決(最大判平成25年9月4日民集67巻6号1320頁)が平成25年12月4日に改正されるなど、違憲判決を受けて速やかに改正がなされている。

 改正法の附則には、政府は法律施行後3年を目途として、改正後の規定の施行の状況等を勘案し、再婚禁止に係る制度の在り方について検討を加える旨記載されている。

 DNA型鑑定等の科学技術の発達やその他の事情によって、そもそも女性に対する再婚禁止期間の規定が不要であるという意見もあることから、今後も、再婚禁止に関する制度が時代に合った合理的なものになるよう議論が続けられるものと考えられる。

以 上

 


[2] 尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁)は、平成7年の刑法改正まで規定が削除されなかった。

 

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