経済産業省、オンラインクレーンゲームのサービス提供に係る風営法上の取扱を明確化
岩田合同法律事務所
弁護士 工 藤 良 平
経済産業省は、産業競争力強化法に定められたいわゆる「グレーゾーン解消制度」に基づく事業者からの照会に対し、オンラインクレーンゲームのサービス提供に係る風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という)上の取扱いを明確化する回答を公表した。
当該照会は、インターネットを通じてクレーンゲームを操作する「オンラインクレーンゲーム」のサービス提供について、既存商業施設内のゲームセンター施設において営業時間外(営業時間内は通常のクレーンゲームとして稼働)に行う営業、及び既存店舗とは別の場所(当該事業専用に機材を設置した施設(倉庫))において終日行う営業(以下「本営業」という)が、風営法第2条第1項第5号に規定する「風俗営業」に該当するとして営業許可取得を要するか否かに関するものである。経済産業省は、風営法に係る規制所管機関である国家公安委員会への協議・確認の結果、本営業においては、店舗内において客に遊技をさせることが想定されないことから、風営法第2条第1項第5号に規定する「風俗営業」に該当せず、同法の規定による規制を受けない旨の回答を公表した。
いわゆる「グレーゾーン解消制度」は、平成26年1月に施行された産業競争力強化法第9条に定められた規制改革のための制度であり、現行の法令や行政規則上の規制の適用範囲が不明確な場合、事業者があらかじめ規制の適用関係について、事業所管官庁に対して確認する制度である。
平成23年3月に閣議決定により導入されたいわゆる「ノーアクションレター制度」の下でも、事業者は、事業活動について、不利益処分や許認可等を定める特定の法令に抵触するかどうかの確認を、当該規制所管官庁へ求めることは可能であった。しかし、①照会の対象が法令に基づく不利益処分等に限定されるとともに、②事業者は、規制の適用が問題となり得る規制所管官庁を検討・判断のうえ、規制所管官庁から正確な回答を得るために必要な書式・資料を準備し、個別的かつ直接的に照会を行う必要がある点で、事業者にとって負担の重い制度となっていたため、「ノーアクションレター制度」の活用件数は必ずしも多いとは言い難い状況であった。
これに対し、「グレーゾーン解消制度」は、①照会の対象が法令に基づく不利益処分等には限定されず、行政機関の通達・訓令等内規に属する事項を含めて包括的な照会を行うことが可能となり、かつ、②事業者は、「事業者のサポーター役」[1]と位置付けられている事業所管官庁を窓口としたうえで、事業所管官庁からの書面作成等に係るアドバイスを受けつつ、事業所管官庁を介して規制所管官庁へ包括的な確認依頼を行ったうえで、原則として申請日[2]から1ヵ月以内に事業所管大臣と規制所管大臣の連名での回答を受領することが可能となり、事業者にとっては「ノーアクションレター制度」よりも使い勝手の良い制度であるといえよう。「グレーゾーン解消制度」に基づく照会の回答は、制度の運用開始から現在に至るまで、経済産業省ホームページにて合計69件の回答事例が公表されているが、本件のオンラインクレーンゲームのサービス提供における照会のように、今後も事業者による新事業分野への進出に際して益々活用されていくことが見込まれる。
以 上
「グレーゾーン解消制度」申請の流れ(経済産業省「グレーゾーン解消制度」の利用の手引き20頁)
[1] http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/kommentar/html_contents/chapter03.html
[2] 実務上、「申請日」については、経済産業省との調整が必要になることにつき留意されたい。