◇SH0824◇消費者委員会、スマホゲームに関する消費者問題についての意見~注視すべき観点~ 村上雅哉(2016/10/04)

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消費者委員会、スマホゲームに関する消費者問題についての意見
~注視すべき観点~

岩田合同法律事務所

弁護士 村 上 雅 哉

 

 消費者委員会[1]は、平成28年9月26日、近年における普及拡大が著しいスマホゲームに関する消費者問題について注視すべき観点をまとめ、これを公表した。
 

 スマホゲームはスマートフォンの普及とともに登場してきた比較的新しい形式のサービスであり、その主な特徴として、プレイヤー層とサービス内容が挙げられる。

 まず、プレイヤー層については、スマートフォン等の端末さえあれば、小さな子供から大人まで年齢を問わず利用可能である。日本は欧米に比べプレイヤーの年齢層が低く、統計上、北米のプレイヤーの平均年齢は30代半ばであるのに対し、日本は20代後半であり、特に10代のプレイヤーの比率が非常に大きいとされる(図1参照)。

 次に、サービス内容については、まず、スマホゲームのほとんどは、原則無料とし一部に課金するという「フリーミアム」というビジネスモデルを採用している。より具体的には、スマートフォンにゲームをダウンロードし一定範囲で遊ぶ限りは無料であるが、ゲームに登場するアイテムやキャラクターを入手したり、プレイ時間を延長するためにはその対価を支払う(課金する)必要があるというシステムである。消費者庁のデータによれば、スマホゲームで遊んだ経験のある人の約3割程度が課金をした経験があるとされている(図2参照)。また、「ガチャ」といってカードを引いて合うとアイテムが当たるという電子くじの仕組みを採用しているものが多いといった点等が特徴として挙げられる。

 今般、消費者委員会が公表した意見では、これらの特徴も踏まえつつ、今後注視すべき観点として、消費者が安心して利用できる適正な環境の整備や、スマホゲームの電子くじの射幸性に関して風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(「風営法」)との関係についての見解が述べられている点が注目される。

 前者については、スマホゲームの電子くじと賭博罪(刑法185条)との関係について触れられており、電子くじで得られたアイテム等を換金するシステムが提供されているような場合や利用者が換金を目的としてゲームを利用する場合は、賭博罪に該当する可能性が高くなるものとして、事業者、消費者ともにこうした観点を踏まえて行動することが望ましいとしている。

 また、後者の点(スマホゲームの電子くじの射幸性)については、スマホゲームで見られる電子くじは、一般的に射幸性が高いものと考えられるとしつつ、風営法の対象としている営業が、物理的設備を設けて行われるものであることとされている点を踏まえ、現行法下ではスマホゲームを提供する事業者は風営法の対象とはならないとしている。そのうえで、風営法が善良の風俗の保持と清浄な風俗環境の保持及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止を目的としていることから、スマホゲームの利用を要因とするトラブルの動向について、社会的悪影響が生じていないかどうか、より具体的には、スマホゲームに課金するための金銭を得ることを目的とした恐喝、窃盗、親族名義のクレジットカードの不正利用の多発等、社会的悪影響が増加していないかを注視していくとしている。

 つまり、現在の状況下では、「ガチャ」が賭博罪に該当するとか、スマホゲームを提供する事業者が風営法の対象とはなるといったことはないものの、今後の状況次第では、何らかの対応が必要となり得るとの見解が示されているものと思料される。

 

図1 スマホゲームの利用経験(年齢別)

 

図2 スマホゲームでお金を支払った経験の有無

※ いずれも消費者委員会のホームページより引用

 


[1] 消費者委は、独立した第三者機関として、各種の消費者問題について独自に調査・審議を行い、消費者行政全般に対して意見表明を行ったり、内閣総理大臣や関係各大臣や消費者庁長官の諮問に応じて調査・審議を実施することを主たる目的として、内閣府に設置された機関であり、10人以下の委員から構成される。

 

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