◇SH0969◇ベトナム:防災基金への負担金支払義務 澤山啓伍(2017/01/17)

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ベトナム:防災基金への負担金支払義務

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

 ベトナム、特に北部では、地域の管轄の「防災及び捜索救助委員会」と呼ばれるところから、「防災基金」(ベトナム語:Quy phong chong thien tai)の負担金を支払うようにという請求がされるケースが多くなっている。

 この防災基金については、これまであまり知られてこなかったものであるため、対応に困る企業も多いようであるが、結論から言えば、法律上、外資系企業を含む企業及びベトナム人従業員には、その負担義務がある。さらに、ベトナム人従業員の負担分についても、雇用主である企業が従業員から徴収して納付する義務があるとされている。以下、詳細を概説する。

 

1. 防災基金とは

 防災基金は、2014年5月1日施行の災害防止法(法第33/2013/QH13号)第10条においてその設立が規定され、その詳細は、政令第94/2014/ND-CP号(「政令94号」)に規定されている。

 災害防止法及び政令94号によれば、防災基金は、各地方(省レベル)で設立され、省級人民委員会により管理される(政令94号第4条1項)。その目的は、自然災害の予防及び対策活動を行うことにあり、被災者への緊急物資の提供、家屋等の修繕等に資金が使われることになっている。

 

2. 負担義務者

 法律上、防災基金の財源には政府予算からの支出はなく、「当該地方に所在する国内及び外国経済組織、並びに18歳以上で法律上就労年齢にあるベトナム人市民の義務的な負担金」及びその他の財源から構成されることになっている(同法第10条1項及び2項)。したがって、外資系企業に対しても、防災基金の負担義務があると考えられる。

 

3. 負担金額

 外資企業を含む独立会計経済組織の負担金額は、1年当たり、原則として、会計報告書記載の総資産の0.02%相当額となっているが、最低50万ドン、最大1億ドンという制限がある(政令94号第5条1項)。この金額を支払った場合、企業の事業活動経費に計上することができる(同条)。

 なお、企業が自然災害の被害を受け、それにより5日以上の操業停止又は総資産の0.02%以上の補修費を使った場合には、その年における負担金の支払いを免除される(政令94号第6条1項(i)号)。また、法人税の減免を受けている企業についても、負担金の減免を受けることができる(同条2項)。

 ベトナム人従業員の負担金については、18歳から定年までの年齢の従業員が対象となり、定年後に再雇用した従業員や外国人は対象外である。負担額は、対象となる従業員1人、1年当たり、当該地方の最低賃金の日割額とされている(同政令第5条2項(b)号)。なお、企業の負担分について免除対象となる場合でも、従業員部分の納付については免除されない。

 

4. 支払の方法及び時期

 負担金額は、省級の基金管理機関の口座又は省級人民委員会から委任された区レベルの口座に送金する必要がある(政令94号第8条1項)。また、支払期限としては、従業員分については毎年5月30日までに1年分を、企業分については、毎年5月30日までに少なくても半分を、10月30日までに残額を送金する必要があるとされている。(同条4項)。

 

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