実学・企業法務(第18回)
第1章 企業の一生
同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー
齋 藤 憲 道
(2) 金(カネ)
1) 資金調達
⑦ リース・レンタル・シェアによる実質的な資金調達
企業は、事業に必要な資産を自ら購入せず、リース・レンタル・シェア等して使用することにより、資金流出を抑制することができる。
(ⅰ) リース
リースは、(a)解約不能かつ物件に係る利益・費用が全て使用者に帰属するファイナンス・リースと、(b)(a)以外のオペレーティング・リースに大別される。(a)ではリース会社が実質的に融資機能を果たす。
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〔リースバック〕
リース会社が、使用者が所有する資産を買い取って所有権をリース会社に移転し、同一物件をそれまでの使用者に貸与する仕組みをリースバックという。形式上は、売買とリースの2つの取引だが、実質的には、使用者が自分の資産に担保を設定して資金調達するのと同じ効果をもつ。
このため、税務・会計面ではリース資産の取引実態を反映するように処理される[1]。例えば法人税法は、中途解約不能で実質的に金銭貸借とみなされる場合は、物件の売却代金を借入金として取り扱う。
(ⅱ) レンタル
利用の期間・頻度の面で割高になる商品を一時的に貸与するレンタル・ビジネスが普及している。企業向けには自動車(重機を含む)・航空機・飲食店用おしぼり・イベント用の映像音楽機器・観葉植物等が普及しており、貸し会議室・多目的ホール等も同種の取引である。
個人向けには自動車・映画DVD・音楽CD・貸衣裳等が普及している。
機械設備等のリースでは使用者が物件を選定するのに対し、レンタルでは一般的にレンタル業者が調達した多数の展示在庫の中から使用者が選択する。
(ⅲ) シェア(共同利用)
物品を所有することよりも使用・利用することに価値を見出して共同利用する「シェア」の動きが広がっている。自動車の時間貸し(カーシェア)、時間貸しの駐車場、寝室が個室で居間・食堂等が共用のシェアハウス等がその例で、民泊もシェア・ビジネスの一形態といえよう。安全性や利便性を確保するために既存制度の改正や運用の変更が必要になる場合が多いが、これが実現されれば、多様なビジネスが出現する可能性がある。