◇SH2735◇企業活力を生む経営管理システム―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―(第56回) 齋藤憲道(2019/08/26)

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企業活力を生む経営管理システム

―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―

同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

4. 株主総会・取締役会の事務局

(1) 株主総会の事務局

 株主総会の開催には、次のように(定時株主総会の例)多くの作業が必要とされ、事務局メンバーには専門知識(会社法等)と実務対応力(会場設営、安全・セキュリティ確保、マスコミ対応等)が求められる。

  1. 〔定時株主総会の主な作業〕
  2. ⑴ 事前の準備
    事務日程の作成、「基準日株主」の確定[1]、決算書類・監査報告書の確定、総会招集通知の作成(記載事項の決定[2]を含む)と発送、法定書類の備置、株主提案権対応、議決権行使対応、会場設営、進行要領作成、想定問答集作成、事前質問状への回答等
  3. ⑵ 総会当日の運営
    会場の安全確保、受付、議決権集計、議事運営、動議・質問への対応、株主に対する説明等
  4. ⑶ 終了後の作業
    議事録の作成と備置、決議通知等の発送、決算公告、有価証券報告書提出、配当金支払開始、役員変更等の登記等

 法律手続きに瑕疵があると、裁判で、株主総会の決議が無効になる可能性がある。また、総会の運営をめぐって紛争が起きると、企業イメージが傷つく可能性もある。

 このため、多くの株式会社が、株主総会を有効かつ円滑に運営する目的で、株主総会事務局に外部弁護士を起用している。

(2) 取締役会の事務局
       監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社については、記載を省略する。

 取締役会は全ての取締役で組織され、次の職務を行う[3]

 (1)会社の業務執行の決定、(2)取締役の職務の執行の監督、(3)代表取締役の選定及び解職

 企業が大規模化・事業多角化・グローバル化すると、それに適した運営方法が導入され、取締役会の活動を補足する目的で、様々な会議が設置される例が多い。

  1. (注) 経営会議・常務会・経営委員会等の(取締会とは別の)任意の機関が設けられている。これらの任意の機関の性格は企業によって異なり、1実質的な審議や意思決定を行うもの(この場合、取締役会は形式的なものになる。)、2社長の諮問・補佐機関の役割を果たすもの、3経営幹部の情報共有あるいは経営方針の周知徹底の場とされるもの、等がある。

 取締役会の事務局は、主に次の管理を行う。

  1.  (1)年間スケジュール(開催日・開催場所等)の策定、(2)法定の決議事項・登記事項の列挙、(3)取締役会規程等に基づく取締役会付議事項の列挙・選択、(4)取締役会招集通知の発信、(5)必要な場合に取締役会メンバー(特に、社外役員)に対して付議事項を事前説明、(6)議事録の作成事務・保存、(7)必要な場合に商業登記手続き。(自社の法務部門又は外部の司法書士が行う会社が多い。)

 取締役会事務局は、他の全社重要会議(経営会議、常務会等)の事務局と連携(場合によっては、相互に牽制)して、取締役会付議事項が「取締役会規程」等に則って適切であることを確認するとともに、企業価値を最大にし、かつ、企業規範(社会規範が優先する)を遵守するように関係者に働きかける役割を担う。

  1. 例 全社が目指す事業の方向(新規事業、生産/販売の海外展開等)と各部門の取組みが整合的であること、あるいは、全社的なリスク・マネジメントや遵法の取り組みに一貫性があること等を確認し、問題点があれば、経営幹部に報告する。

 「取締役会規程」の主な内容を次に例示する[4]

  1. (注) 取締役会規程の制定・運用は、取締役会の決議が無効にならないように、法律専門家の支援・確認を得て行うことが必要である。
  1. ・ 目的(法令、定款の定めに従う。その他についてはこの規程による。)
  2. ・ 取締役会の構成(全ての取締役で組織する。)
  3. ・ 開催(3ヵ月に1回以上開催する。)
  4. ・ 開催場所(本社、テレビ会議の場合、電話会議の場合等)
  5. ・ 取締役会の招集(○○が招集する。○○に事故がある場合は△△が招集する、等)
  6. ・ 招集通知(会日の○日前までに発信する。取締役全員の同意がある場合は、これを短縮できる等)
  7. ・ 議題の事前通知(原則として、招集通知に記載する。)
  8. ・ 議長(取締役会が予め定めた者が議長を務める。この者に事故がある時は、予め取締役会が定めた順位の者が代わる。)
  9. ・ 決議(決議に参加できる取締役の過半数が出席し、出席取締役の過半数をもって決議する。利害関係を有する取締役は決議に参加できない。)
  10. ・ 取締役会付議事項
    (株主総会事項、役員事項、グループ運営関係事項、重要な規程の制定・改廃、株式・財務事項、内部統制システム事項、コーポレート・ガバナンス事項、その他の法定事項、他)
  11. ・ 報告事項(例:代表取締役及び業務執行取締役は自己の職務の執行の状況を3か月に1回以上報告する[5]。)
  12. ・ 取締役以外の者の出席(取締役会が報告を求めた者の出席等)
  13. ・ 議事録の作成・保管(原案の作成者、記名・押印の方法、保管責任部署)
  14. ・ 欠席取締役に対する通知(議事録を参考配付する等)
  15. ・ 取締役会への報告の省略(取締役全員に既に報告済みの場合等に省略)
  16. ・ テレビ会議、電話会議等
    (注) 独占禁止法の課徴金減免制度の適用の申請は、公正取引委員会の受付順位が問題になるので、一刻を争う。
  17. ・ 事務局(担当部署を明示する。)
  18. ・ 改正(「この規程は、取締役会が決議して改正する。」等)


[1] 会社法124条1~3項

[2] 会社法299条4項(株主総会招集通知記載事項)、298条1項(株主総会召集にあたって決めるべき事項:日時、場所、目的事項、書面・電磁的方法による議決権行使、他)

[3] 会社法362条1項・2項

[4] 会社法362条~373条

[5] 会社法363条2項

 

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