◇SH1032◇実学・企業法務(第27回) 齋藤憲道(2017/02/23)

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実学・企業法務(第27回)

第1章 企業の一生

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

(4) 情報(知的財産、経営情報)

 資産としての情報には、(a)知的財産権として法律で保護される情報(不正競争防止法が規定する営業秘密を含む)と、(b)事業に有用な経営上(技術、製造、営業、事業計画、その他)の(a)以外の経営情報がある。

  1. (注) 情報資産は、広義では情報を活用する仕組み(システム)を含むが、本稿では狭義の情報資産を対象とする。
  1. 〔参考〕知的財産基本法(2条1項、2項)は、「知的財産」と「知的財産権」を次のように定義している。
  2. 1項 この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
  3. 2項 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

 知的財産を権利化する方法は、次のように、権利の種類によって異なる。

① 官庁等に登録して権利にする。

 (a) 特許権・実用新案権・意匠権・商標権は、特許庁に出願して登録する。  

  〔根拠法1〕審査登録・権利付与=特許法、意匠法、商標法

   (注) 継続して3年以上、日本国内で使用されていない商標は、
     不使用取消審判請求によって登録が取り消される。(商標法50条)

  〔根拠法2〕無審査登録・権利付与=実用新案法

 (b) 回路配置利用権[1]は、(財)ソフトウェア情報センター(SOFTIC)に登録する。

  〔根拠法〕半導体集積回路の回路配置に関する法律(通称、半導体回路配置保護法)

 (c) 育成者権は、農林水産省に品種登録する。

  〔根拠法〕種苗法、種苗法施行令、種苗法施行規則、品種登録規則

 (d) 商号は、法務局に登記する。

  〔根拠法〕商法、会社法、商業登記法

② 創作と同時に、特定の方式を履行することなく権利になる(無方式主義)。

 (a) 著作権

  〔根拠法〕著作権法

   「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、
   文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう[2]

   「著作権」及び「著作者人格権」の発生には、いかなる方式の履行をも
   必要とせず[3]創作と同時に発生し、原則として創作時から著作者の
   死後50年まで保護される[4]

  1. (注) 文化庁が運用している著作権登録制度[5]は、権利の保護を手厚くして権利関係を明確にするものであり、権利を取得するためのものではない。
     
  2. 〔著作権法が例示している著作物〕同法10条
    言語の著作物(小説、脚本、論文、講演他)、音楽の著作物、舞踊又は無言劇の著作物、美術の著作物(絵画、版画、彫刻、書、漫画他)、芸術的な価値がある建築の著作物、図形の著作物(地図、学術的図面、図表、模型他)、映画の著作物、写真の著作物、プログラムの著作物

③ 不正競争防止法に定める違法行為類型による侵害から保護される権利(登録は不要)。

 (a) 商品・サービスの市場競争力の源泉になっている表示・形態・技術的制限手段を保護する。

  1. 〔不正競争防止法が禁じている不正競争〕同法2条1項
    周知な商品等表示の混同惹起(1号)、著名な商品等表示の冒用(2号)、他人の商品形態を模倣した商品の譲渡等(3号)、技術的制限手段を無効化する装置等の提供(11号、12号)、ドメイン名の不正取得等(13号)、商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示(14号)、信用毀損行為(15号)、代理人等の商標冒用(16号)

(b) 秘密として管理している技術上又は営業上の情報。

 秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を備える情報を保護する。

 管理を破る行為が、違法とされる。

  1. 〔不正競争防止法で保護される営業秘密の定義〕同法2条6項
    営業秘密とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。」


[1] 経済産業大臣が、回路配置利用権(設定登録日から10年存続。権利者は侵害者に損害賠償請求・差止請求が可能。)の登録に関する所定の要件に適合する申請者を登録する。(財)ソフトウェア情報センター(SOFTIC)が登録業務を担当している(2016年9月現在)。

[2] 著作権法2条1項1号

[3] 著作権法17条2項(無方式主義)

[4] 著作権法51条。TPP協定は70年にするよう求めている。なお、無名又は変名・団体名義・映画については著作権法52~54条。

[5] 登録事務は、文化庁と(財)ソフトウェア情報センターが行っている。

 

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