◇SH1038◇最三小判、クレジット契約の名義貸人であっても免責される場合があるとされた事例 大浦貴史(2017/02/28)

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最三小判、クレジット契約の名義貸人であっても免責される場合があるとされた事例 

岩田合同法律事務所

弁護士 大 浦 貴 史

 平成29年2月21日、割賦販売法に関し注目すべき最高裁判決が下された。クレジット契約の名義貸人であっても免責される場合がある旨の判断がされたものとして一部報道もされており、クレジット業界以外の企業においても、最高裁の消費者保護重視の姿勢が表れた判決としてチェックしておくべきものである。

 事案の概要は以下のとおりである。すなわち、呉服等を販売する業者(A)が、既存顧客(Yら)に対し、商品を購入するに当たりクレジットを組めない高齢者等の人助けのために、名義を貸してほしい、返済はAが責任を持つから絶対に迷惑は掛けない等と申し向けた上で、Yらに対し、クレジット会社(X)との間でクレジット契約を締結させたというものである。なお、実際には、単にAの運転資金調達目的であった。その後、しばらくの間は約束どおりAはYらに対し返済金相当額を支払っていたが、Aが破産したため支払いは止まった。その後、Xは、Yらに対して返済を求め提訴した。

 この点、割賦販売法35条の3の13第1項6号には、一定の販売業者が、「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」について不実の告知をしたときは、クレジット会社とのクレジット契約を取り消すことができる旨の規定がある。そこで、Yらは、Xに対して、クレジット契約の取消し等を主張した。

 原審(札幌高判平成26年12月18日)は、Aは破産するまで約束どおりYらに替わって返済をしていたのであるし、高齢者等の人助けのためであったかどうか等は、「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に該当せず、取消しは認められないと判断した。また、別の争点に関してであるが、Yらは、Aの真の目的は知らなかったとしても、名義貸しであることを知り、それが一般常識に照らして許されないことを認識し又は認識し得たのであるから、Xに対してクレジット契約の無効等を主張することは、信義則に反し許されないと判断していた。

 これに対して、本判決は、高齢者等の人助けのためであったかどうか等も「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に該当するとし、また、名義貸しであるからといって直ちにクレジット契約の無効等を主張することが信義則に反するとはいえないとして、原判決を破棄し、さらに審理を尽くさせるため差し戻した。

 かかる多数意見に対しては、いかに名義貸人が法律知識に乏しく、また、高齢者等の人助けのためとして行った行為だとしても、それが不正な行為であることは常識的に理解できたはずであるし、名義貸しに関しクレジット会社の責めに帰すべき事由があったか否かを問わず、名義貸しに係る損失をクレジット会社に負担させるべきでない等として上告棄却すべきとする1名の反対意見が出されている。

 本件において、Yらには落ち度がなかったとはいえず、一方、Xには、特に落ち度があったものでもないから、反対意見にも首肯しうるところは多いと思うが、多数意見は、消費者保護を重視した判断を下したものといえる。割賦販売法という特殊な法律に関する判断ではあるが、最高裁の消費者保護重視の姿勢がよく表れており、企業が消費者対応を検討するに当たっても、参考になるところがあると思われるため、紹介した次第である。

 

 

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