◇SH1149◇公正取引委員会、独占禁止法研究会報告書の公表と課徴金制度の見直しに係る意見募集 松原崇弘(2017/05/10)

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公正取引委員会、独占禁止法研究会報告書の公表と
課徴金制度の見直しに係る意見募集

岩田合同法律事務所

弁護士 松 原 崇 弘

 

1. 課徴金制度の見直し等に係る意見の募集

 公正取引委員会は、平成29年4月25日、独占禁止法研究会報告書(以下、「本報告書」という。)を踏まえ、課徴金制度の見直し等について、具体的な制度改正案等の検討作業を進める方針を公表した。この検討作業の参考とするため、公正取引委員会は、本報告書に示された事項について、制度設計の具体案、参考となる情報等を広く国民から募集している(なお、意見の提出期限:平成29年6月30日(金曜)18時必着)。

 本稿では、本報告書の結論の要旨を掲げた上で、いくつかの論点を紹介することとしたい。

 

2. 本報告書の結論の要旨

 本報告書の結論の要旨は以下の表のとおりである。

 1. 課徴金の算定・賦課方式の基本的な枠組み
  1.  • 課徴金の算定基礎となる売上額の見直し。
  2.  • 算定期間の上限(3年間)撤廃又は延長、必要に応じて基本算定率の見直し。
  3.  • 業種別算定率の廃止、中小企業算定率の適用対象の適正化。
  4.  • 繰り返し違反・主導的役割への加算は原則維持、早期離脱の減算は課徴金減免制度に取り組んで廃止。
  5.  • 課徴金納付命令の義務的賦課は原則維持。
 2. 調査協力インセンティブを高める制度
  1.  • 現行の課徴金減免制度の拡充。
  2.  • 調査妨害行為に対する課徴金の加重制度の新設、検査妨害罪の法人に対する罰金刑の引き上げ。
 3. 新制度の下での手続保障
  1.  • 新たな課徴金減免制度の利用に係る弁護士と事業者との間のコミュニケーションに限定して、実態解明機能を損なわない範囲において、証拠隠滅等の弊害防止措置を併せて整備することを前提に、運用により秘匿特権に配慮。

3. 課徴金高額化の方向性

 実務への影響が大きい提言内容として、本報告書は、課徴金の算定基礎とする売上額の算定期間に関し、「3年間」という算定期間の上限を撤廃し、例示として、「調査開始日から遡って10年」までの売上額を課徴金の算定基礎とする規定を法定することを挙げる。

 また、本報告書は、課徴金の基本算定率に関し、現行法のように基本算定率や算定期間の上限が設定されている状況下では、平均的な不当利得さえも徴収できていないこと、平成17年の改正により改正された現行の基本算定率が適用されて以降も繰り返し違反がみられること、諸外国においては高額な制裁金等の賦課など競争法の厳正な執行が推進される傾向にあること等に鑑みると、現行の課徴金額の水準は、違反抑止に必要十分とはいえないことを挙げる。

 このように本報告書は、方向性として、課徴金の金額の水準を引き上げる方向で提言している。

 

4. 課徴金制度に係るその他の指摘

 本報告書では、一定の範囲で公正取引委員会がその専門的知見により事案に応じて個別に課徴金の算定・賦課を行う裁量を認める制度も検討している。他方で、本報告書は、手続保障の見直しとして、新たな課徴金減免制度の利用に係る弁護士と事業者との間のコミュニケーションに限定して、運用により秘匿特権に配慮することを提言している。

 

5. まとめ

 以上の通り、本報告書においては、課徴金制度の見直し等として、課徴金の水準が引き上げられ、かつ、公正取引委員会の裁量が広くなる方向性にある。企業としては、今後の法改正の動向に留意する必要があろう。

 

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