◇SH1317◇実学・企業法務(第68回) 齋藤憲道(2017/07/31)

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実学・企業法務(第68回)

第2章 仕事の仕組みと法律業務

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

Ⅲ 間接業務

2. 人事・勤労

〔雇用形態〕
 近年、日本で、総労働人口の4割弱[1]をパート・アルバイト・契約社員・派遣社員などの非正規雇用者が占めるようになったこと等を踏まえ、社会全体(外国人労働者を含む)で労働法制・年金制度等のあり方が模索されている。

 かつて、労働者派遣事業は職業安定法で全面的に禁止されていたが、1985年に労働者派遣事業法[2]が制定されて合法になった。派遣労働者を受け入れる場合は、労働者派遣事業法を守り、管理台帳を整備するなど派遣先(=受入側)としての義務を果たすことが必要である。請負業者の作業員を受け入れる場合は、請負業者の責任者を通じて作業指示を行うことを徹底しなければ、請負業者の作業員について労働者派遣と判断され、受入側が使用者としての責任を負う。

 また、非正規雇用者の増加に伴って表面化した社会的問題の解消に向けて、さまざまな法整備が行われてきた。近年では、セーフティネット強化のために次のような法改正が行われている。

  1. (例1)パートタイム労働法[3](2014年改正)
    本法は、パート労働者と通常の労働者との均等・均衡待遇の確保を推進することを目的とし、賃金・教育訓練・福利厚生における「差別的取扱い禁止」「実施義務、配慮義務」「努力義務」等の適用を、職務及び人材活用の実態を考慮して行うべきことを定める。
  2. (例2)労働契約法(2012年改正)[4]
    有期労働契約(1年契約等)の反復更新の下で行われる「雇止め」の不安を解消し、安心して継続勤務できるようにする法整備が行われた。これにより、通算5年超の有期契約者の無期労働契約への転換、「雇止め法理」の法定化、契約期間の違いによる不合理な労働条件の禁止、が実現した。
  3. (例3)雇用保険法(2010年改正)
    非正規雇用労働者に対する雇用保険の適用基準を緩和して(雇用見込みを「6ヵ月以上」から「31日以上」に変更)、適用範囲を拡大した。
  4. (例4)厚生年金保険・健康保険の適用拡大[5](2016年10月施行)
    短時間労働者(従業員501人以上の企業に勤務する週20時間以上労働等の要件に該当)等にも厚生年金保険・健康保険の適用が拡大され、より多数者が、より厚い保障を受けることができるようになった。

〔外国人就労〕
 不法就労者を放置すると、日本の労働市場等に深刻な影響が生じ、治安悪化・社会コストの増大等の問題が発生することが懸念されるとして、「出入国管理及び難民認定法」及び「雇用対策法」が制定され、外国人労働者の不法就労を防止するとともに、外国人が能力を発揮できるようにする雇用管理の水準向上が図られている。

 外国人を雇用する事業主は、日本で中長期滞在する外国人に交付される在留カード等により在留期間・就業制限の有無・資格外活動許可の有無等を確認し、雇入れ・離職をハローワークに届け出なければならない[6]。なお、留学や家族滞在等の在留資格で就労活動をするには入国管理局の許可が要る。

 出入国管理及び難民認定法に違反して不法就労活動させた者等には、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金が科される[7]



[1] 総務省統計局平成28年5月10日「労働力調査(詳細集計)速報」では38%。

[2] 労働者派遣事業には、厚生労働大臣への届出を必要とする特定労働者派遣事業(常用雇用型)と、厚生労働大臣の許可を必要とする一般労働者派遣事業(登録型)がある。

[3] 「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の通称

[4] 2013年「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」が制定され、大学等・研究開発法人の研究者・教員等の無期転換申込権発生までの期間(原則)5年が10年とされた。(2014年4月施行)

[5] 厚生年金保険法改正及び健康保険法改正「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」平成24年法律第62号、平成28年10月1日施行。

[6] 雇用対策法28条。ただし、外交等の在留資格者は入管法19条の17による。

[7] 73条の2第1項

 

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