◇SH1337◇東証、東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び委員会の設置状況 佐藤修二(2017/08/08)

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東証、東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び委員会の設置状況

岩田合同法律事務所

弁護士 佐 藤 修 二

 

 東京証券取引所は、本年7月26日、「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び委員会の設置状況」と題する書面を公表した。概況は、以下のとおりである。

 

<独立社外取締役の選任状況>
  2名以上 3分の1以上
市場一部 88.0% 27.2%
JPX日経400 96.0% 34.2%

 

<指名委員会(法定・任意)の設置状況>
  設置済 過半数が社外取締役
市場一部 31.8% 48.7%
JPX日経400 57.0% 49.5%

 

<報酬委員会(法定・任意)の設置状況>
  設置済 過半数が社外取締役
市場一部 34.9% 47.5%
JPX日経400 60.1% 50.5%

 

 以上のように、独立社外取締役の選任、指名・報酬委員会の設置は進んでいる。それに加え、指名委員会や報酬委員会の委員長が独立社外取締役である例も、市場第一部・JPX日経400ともに、法定の指名委員会・報酬委員会で7割程度、任意の指名委員会・報酬委員会で4割超となっている。

 周知のとおり、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という。)は、独立社外取締役の有効な活用を謳い、上場会社は独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきであるとし、 また、3分の1以上の独立社外取締役を選任することの有用性も示唆している(原則4-8)。さらに、監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会、報酬委員会を設置することなどにより、経営陣の指名や報酬について独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきであるとする(補充原則4-10①)。

 今回の調査結果は、こうしたCGコードの要請に沿う動きが、上場会社において順調に進展していることを示している。

 ところで、筆者は、2011年~2014年の間、国税庁附属の第三者的な税務紛争処理機関である国税不服審判所において、外部登用の審判官を務めたことがある。この外部登用の仕組みは、2008年ころから徐々に始まったようだが、特に2009年に成立した民主党政権が、国税不服審判所は課税執行機関である国税庁の下部組織として中立性に欠けるとの批判に応え、審判官の半数を外部登用者とする方針を打ち出したことによって大きく拡充された。筆者は、外部登用拡大後の審判所で、国税当局からの出向者である審判官に交って、女性も多く含む外部登用の審判官が合議に加わることで、課税当局側だけでなく納税者側の視点も踏まえて、活発に議論が行われる様を目の当たりにし、同質性の高い日本の組織にあって、外部の血を入れることの意味の大きさを体感した。奇しくも、2011年~2014年というのは、CGコード制定による「夜明け」前ではあるが、今から振り返れば、社外取締役の登用、更には複数選任が進展した黎明期でもあった。

 このように、企業経営に外部の視点を入れることは、それに伴うかもしれない非効率性等を考慮してもなお、少なくとも長期的な企業の発展にとって有益であると思われる。既に女性の社外取締役は全く珍しくなく、取締役会の議論の活性化・多様化に大いに成果を上げていると仄聞するが、今後は、外国人の社外取締役を迎えることも、否応なしにグローバル展開を宿命づけられている日本企業のガバナンス強化にとって、有効な選択肢の一つとなり得よう。外国人の社外取締役を迎える場合は、言語や文化の違いによるコミュニケ―ション等の問題も想定されるが、最近は日本語をある程度解し、日本の企業文化を理解する外国人も増えてきているものと思われる。わが国の企業経営が、より一層の多様性を進展させることを期待したい。

 

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