ブラジルの倒産手続について(2)
西村あさひ法律事務所
弁護士 後 藤 泰 樹
弁護士 古 梶 順 也
4 裁判上の再生手続
裁判上の再生手続は、米国のチャプター11手続を参考にして作られたといわれる法的再建手続である。裁判所により管財人が選任されるが、管財人は通常は監督を行うのみで、従来の経営陣が事業経営を継続する。その意味で、裁判上の再生手続は、米国のチャプター11や日本の民事再生手続のようなDIP型手続(債務者が財産管理処分権を保持し続ける型の倒産手続)になる。なお、裁判所や管財人などの完全な監督下で行われる手続という点で、後述する裁判外の再生手続と異なる。
⑴ 申立て
A. 申立権者
裁判上の再生手続の申立権者は債務者企業で、破産手続とは異なり、債権者による申立ては認められていない。なお、破産手続と同様に、株式会社(Sociedade Anônima)である債務者が裁判上の再生手続を申し立てる場合、株主総会の承認が必要となるが、緊急の場合には、支配株主の同意を得て申立てを行い、事後的に株主総会の承認を得るという形で進めることも可能である。
B. 申立要件
債務者が申立てを行うためには、以下の要件を全て充足することが必要である(倒産法第48条)。
(ⅰ) 債務者が、2年を超えて事業を継続していること
(ⅱ) 債務者が、現に破産していないこと、過去に破産したことがある場合には、裁判所の決定により、残存債務の消滅が宣言されていること
(ⅲ) 債務者が、過去5年以内に、再生計画の認可を得ていないこと
(ⅳ) 債務者又はその役員若しくは支配株主が、倒産法に定めるいずれの犯罪においても有罪判決を受けていないこと
C. 申立ての効果
再生手続の申立て自体には、破産手続の申立てと同様に、米国のチャプター11のような債権者の訴訟手続や強制執行を停止する効力(オートマティック・ステイ)はない。
(2) 再生手続開始決定
申立てが適切になされた場合には、裁判所は、裁判上の再生手続の開始を決定する。申立てから裁判所による決定までは、通常1週間程度かかる。
なお、再生手続開始決定がなされた場合、債務者は、債権者集会の承認がない限り、再生手続を撤回することはできない。
A. 再生手続開始決定の効力
再生手続開始決定がなされると、当該決定日から180日間は、債務者に対するあらゆる訴訟手続及び強制執行(担保権の実行を含む。)が原則として禁止される。
もっとも、再生手続の対象とならない債権(再生計画による権利変更の対象とはならない債権)は、当該停止効の対象にもならない。再生手続の対象とならない債権としては、例えば(i)再生手続の申立て後の原因に基づき発生した債権や(ii)租税債権(国税法等に基づく分割払いプログラムの対象となったものを除く。)が挙げられる。また、破産手続と同様に、債権者に信託譲渡(alienação/cessão fiduciária)されている財産については、債権者は当該停止効の影響を受けることなく再生手続外で権利行使ができるとされている。
なお、破産手続開始決定と異なり、再生手続開始決定には、弁済期限の到来していない債権について弁済期限を到来させる効力は認められていない。
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