◇SH1356◇実学・企業法務(第73回) 齋藤憲道(2017/08/24)

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実学・企業法務(第73回)

第2章 仕事の仕組みと法律業務

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

Ⅲ 間接業務

3. 経理

 経理業務は、企業の金(カネ)の取扱いを主管し、それを記録して帳簿にする業務のことで、会計・税務・財務等を総称して経理ということが多い。具体的には、現金出納・原価管理・決算書の作成(必要に応じて公表する)・税務申告・資金調達・資金運用等を行う。

 現金を金庫に保管する関係で金庫の鍵を経理責任者が所持・管理する例が多く、社印・銀行印を金庫内に保管する場合は、金庫の鍵を所持する経理責任者が押印代行責任者を務める。

  1. (注) 契約書の押印に用いる社印(法務局に登録済)と、銀行預金の引出・手形小切手の発行に用いる銀行印(銀行に登録済)の両方を同一人物が保管すると、不正な出金が可能になるので、それぞれ別の者(又は別の部署)が管理するのが望ましい。

 経理には現金出納・会計・税務等のスキルがあるので、社内決裁事務の中で金銭に関する事項を担当し、かつ、事業計画(予算)策定・内部監査等の業務も経理が主管する企業が多い。

 また、各部門が購入(又は賃借等)する部品材料・設備・備品等の代金支払、営業等で発生する売掛金債権の与信管理・債権回収等の業務を行うことから、物品購入代金支払や営業・購買等の取引の基本ルールを定める社内規程や業務基準を策定する。

〔会計の基本は各社共通〕
 会計処理の流れはどの会社でも次の(1)~(4)のようになっている。この過程で不正行為を発見し、それを排除する仕組みを構築すると、金銭・決算に係る企業不祥事を回避することができる。

  1. ⑴ 企業の日々の取引が行なわれる。営業活動を行うと、商品の販売や生産、部品・完成品の入出庫、給与支給や物品購入に伴う現金出納等の日常取引が発生する。
  2. ⑵ それぞれの取引を記帳する。具体的には、個々の取引を正確に把握して、正しく仕訳けし、遅滞なく伝票作成やパソコン入力を行う。
  3. ⑶ 上記 ⑵ に基づいて会計帳簿(総勘定元帳、補助簿、合計残高試算表等)等を作成する。
  4. ⑷ 決算処理を行ない、会社法の計算書類、金融商品取引法の財務諸表、各種税法の税務申告書等を作成する。

〔経理業務の変遷〕
 1970年代頃まで、経理部門で(1)設備投資効率・作業者の生産性を分析して投資の是非を判断し、(2)伝票・帳簿の設計を通じて経営管理システムを設計し、(3)会社印・銀行印を管理する立場にあることから押印依頼された契約書を審査(必要に応じて自ら作成)する企業が多く見られた。
 しかし、近年、企業は、(1)生産(機械化、多品種少量化)や技術(開発の専門化・迅速化、知的財産の価値の増大)の変質、(2)情報通信技術の進展による情報処理高速化・ネットワーク拡張の容易化、(3)事業のグローバル化、(4)新経営課題への取り組み(環境配慮、省資源・省エネルギー化対応)等への対応に迫られ、多くの管理手法が開発されて、従来、経理部門に集約されていた業務が社内の他部門に移管されて、分散している。例えば、今日では、設備投資効率の計算は設備設計能力を有する生産技術部門、経営管理システムの設計・運用はコンピュータシステムを構築・運用している情報システム部門、契約書の作成・審査は法務部門等が担当している企業が多い。
 一方、経理自身でも、業務の増大(事業の選択と集中に伴う管理・税務業務、資金の運用・調達のグローバル化対応、内部統制システムの運用に係る業務、外部公表資料の増加〈連結財務諸表、四半期報告書等〉、会計基準の国際化等)に対応する必要性から、財務や税務の専門機能を強化して経理部門から分離して独立組織にする傾向がある。

 

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