◇SH1465◇金融庁、平成29年金融商品取引法改正に係る政令・内閣府令案等を公表(2017/10/30)

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金融庁、平成29年金融商品取引法改正に係る政令・内閣府令案等を公表

−−株式等の高速取引への対応、フェア・ディスクロージャー・ルール等−−

 

 金融庁は10月24日、平成29年金融商品取引法改正(5月24日公布)に係る政令・内閣府令案等を公表した。11月22日までパブリック・コメントに付し、平成30年4月1日の施行を予定している。

 今回の法改正では、㈰当局が株式等の高速取引の実態などを確認できるよう、登録制を導入する規定等、㈪投資家間の情報の公正性を確保するため、上場会社による公平な情報開示に係るルール(フェア・ディスクロージャー・ルール)、等の整備を行ったものであり、金融庁ではこれに関連して下記のような政令・内閣府令・ガイドライン等の改正・制定を行うこととしている。

 以下、今般の改正等の概要を紹介する。

 

1 政令の改正の概要

(1) 株式等の高速取引を行う者に対する登録制の導入等

 高速取引行為の対象となる有価証券の売買等またはその委託に準ずる行為として、有価証券の売買等に係る運用行為等を規定する。

 高速取引行為者の最低資本金額を1,000万円、最低純財産額を零とする。

(2) フェア・ディスクロージャー・ルール(上場会社による公平な情報開示)

 ルールの対象となる上場会社等の範囲を、金融商品取引所に上場する株券、投資証券および社債券等の発行者とする。

(3) その他

 ETF(上場投資信託)市場の流動性の向上を図る観点から、清算機関が行う金融商品債務引受業の対象取引にETFの設定・交換を追加する。

 

2 内閣府令の改正等の概要

(1) 株式等の高速取引を行う者に対する登録制の導入等

 高速取引行為となる方法を、発注に係るサーバが金融商品取引所・PTS(私設取引システム)の売買突合システムの設置場所と同一・隣接・近接する場所に所在し、かつ、他の注文との競合を防ぐ仕組みが講じられているものとする。

 業務方法書の記載事項として取引戦略の類型等、コンプライアンス責任者・業務管理責任者等を規定するなど、高速取引行為者の登録に関する規定を整備する。

 業務管理体制の整備として社内規則の整備および電子情報処理組織の管理を十分に行うための措置等を規定するほか、注文・取引記録の作成・保存方法、当局への報告・届出事項等、高速取引行為者の業務および経理ならびに監督に関する規定を整備する。

(2) フェア・ディスクロージャー・ルール

 ルールの対象となる情報受領者の範囲として、金融商品取引業者および登録金融機関等ならびにIR業務に関して情報伝達を受ける株主および機関投資家等を規定する。

 公表前の重要な情報を証券アナリスト等に提供した場合の当該情報の公表方法として、EDINET等のほか、自社ホームページを規定する。

(3) その他

 ETF市場の流動性の向上を図る観点から、空売り規制の適用除外の対象に、金融商品取引所からETFのマーケット・メイカーとして指定を受けた高速取引行為者がETFの円滑な流通を確保するために行う空売りを追加する。

 国債の決済期間短縮化(T+1化)に伴い導入が予定されている銘柄後決め方式の取引に対応するため、有価証券等清算取次ぎに係る銘柄等の特定方法を追加する。

 

3 金融商品取引法第27条の36の規定に関する留意事項(フェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン)の概要

 ガイドラインは、法令に関する一般的な解釈をQ&Aで示すものであり、ルールの対象となる重要情報の管理について、それぞれの上場会社等の状況に応じた管理をすることが考えられることなどを明確化する。

 ガイドラインの一部を紹介すると、次のとおりである。

 

○ 法第27条の36第1項関係

(企業の将来に関する議論等の取扱い)

(問4)以下のような情報は、本ルールの対象となりますか。

 (1)中長期的な企業戦略・計画等に関する経営者との議論の中で交わされる情報

 (2)既に公表した情報の詳細な内訳や補足説明、公表済の業績予想の前提となった経済の動向の見込み

 (3)他の情報と組み合わさることによって投資判断に影響を及ぼし得るものの、その情報みでは、直ちに投資判断に影響を及ぼすとはいえない情報(いわゆる「モザイク情報」)

 

(答)

 本ルールは、未公表の確定的な情報であって、公表されれば有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性のある情報を対象とするものです。

 問にある情報が本ルールの対象となるかどうかについては、それぞれ以下のように考えられます。

 (1) 今後の中長期的な企業戦略・計画等に関する経営者と投資家との建設的な議論の中で交わされる情報は、一般的にはそれ自体では本ルールの対象となる情報に該当しないと考えられます。ただし、例えば、中期経営計画の内容として公表を予定している営業利益・純利益に関する具体的な具体的な計画内容などが、それ自体として投資判断に活用できるものである場合であって、その計画内容を中期経営計画の公表直前に伝達するような場合は、当該情報の伝達が重要情報の伝達に該当する可能性がある点にご留意下さい。

 (2)既に公表した情報の詳細な内訳や補足説明、公表済の業績予想の前提となった経済の動向の見込みは、一般的にはそれ自体では本ルールの対象となる情報に該当しないと考えられます。ただし、こうした補足説明等の中に、例えば契約済みの為替予約レートの数値のような、その後の実体経済の数値と比較することで容易に今後の企業の業績変化が予測できる情報が含まれる場合は、当該情報が重要情報に該当する可能性がある点にご留意下さい。

 (3)工場見学や事業別説明会で一般に提供されるような情報など、他の情報と組み合わせることで投資判断に活用できるものの、その情報のみでは、直ちに投資判断に影響を及ぼすとはいえない情報(いわゆる「モザイク情報」)は、それ自体では本ルールの対象となる情報に該当しないと考えられます。

 

(問5)重要情報の適切な管理のために必要な措置

 重要情報公表府令第5条では、重要情報の適切な管理のために必要な措置として、金融商品取引業等以外の業務を遂行する過程において伝達を受けた重要情報を、当該重要情報が公表される前に金融商品取引業等において利用しないための的確な措置が規定されていますが、具体的にはどのような措置を講じる必要がありますか(第1号関係)。

 

(答)

 金融商品取引業等以外の業務を遂行する過程において伝達を受けた重要情報を、当該重要情報が公表される前に金融商品取引業において利用しないための的確な措置としては、金融商品取引業以外の業務を遂行する過程において伝達を受けた重要情報を、当該重要情報が公表される前に金融商品取引業等において利用しないための社内規則等(社内規則その他これに準ずるものをいいます。)を整備し、当該社内規則等を遵守するための従業員に対する研修その他の措置を講じる必要があると考えられます。

 

4 金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針の改正の概要

 証券会社等が、無登録で高速取引行為を行う者である場合や高速取引行為者において電子情報処理組織の管理を十分に行うための措置を適正に講じていることが確認できない場合に、取引を受託することがないよう取引開始時等の確認について例示するほか、所要の改正を行う。

 また、(別冊)高速取引行為者向けの監督指針を整備し、高速取引行為者の業務の適切性に係る検証の留意事項や業務方法書における取引戦略の記載上の留意事項を規定する。

 

 

  1. ◯ 金融庁、平成29年金融商品取引法改正に係る政令・内閣府令案等の公表について(10月24日)
    http://www.fsa.go.jp/news/29/syouken/20171024.html
     
  2. 【政令】
    (別紙1)金融商品取引法施行令(昭和40年政令第321号)新旧対照表
    http://www.fsa.go.jp/news/29/syouken/20171024_9.pdf
     
  3. 【内閣府令等】
    (別紙2)重要情報の公表に関する内閣府令
    http://www.fsa.go.jp/news/29/syouken/20171024_10.pdf
  4.   (別紙3)金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令(平成5年大蔵省令第14号)等 新旧対照表
    http://www.fsa.go.jp/news/29/syouken/20171024_11.pdf
  5.   (別紙4)高速取引行為となる情報の伝達先を指定する件
    http://www.fsa.go.jp/news/29/syouken/20171024_12.pdf
  6. 【ガイドライン】
    (別紙5)金融商品取引法第27条の36の規定に関する留意事項(フェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン)
    http://www.fsa.go.jp/news/29/syouken/20171024_13.pdf
  7. 【監督指針】
    (別紙6)金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針新旧対照表
    http://www.fsa.go.jp/news/29/syouken/20171024_14.pdf
  8.   (別紙7)金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(別冊)高速取引行為者向けの監督指針
    http://www.fsa.go.jp/news/29/syouken/20171024_15.pdf
     
  9. 参考
    金融庁の担当者による改正法の解説は、「平成29年改正金商法の解説(1)〜(3・完)」商事法務2139号〜2141号を参照。

 

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