◇SH1488◇ISS、議決権行使助言方針(ポリシー)改定に関するオープンコメントの募集を開始 伊藤広樹(2017/11/09)

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ISS、議決権行使助言方針(ポリシー)改定に関するオープンコメントの募集を開始

岩田合同法律事務所

弁護士 伊 藤 広 樹

 

 Institutional Shareholder Services Inc.(以下「ISS」という。)は、本年10月26日、2018年版の日本向けの議決権行使助言方針(ポリシー)の改定案(以下「本改定案」という。)を公表し、本改定案の内容についてオープンコメントの募集を開始した。なお、応募期限は本年11月9日であり、また、本改定案を反映した議決権行使助言方針は、2018年2月から施行される予定である。

 本改定案では、次の事項の改定を予定しており、以下では、その概要を説明する。

  1. ① 指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社の取締役会構成要件の厳格化
  2. ② 買収防衛策の総継続期間要件の導入
  3.  
  4. ※ なお、以上の他、本改定案では、(ご参考)として、株主総会の開催日の分散を目的とする定時株主総会の基準日の変更(定款変更)については、原則として賛成推奨する旨も記載されている。

 

1.  ① 指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社の取締役会構成要件の厳格化

 本改定案①では、指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社に対して、取締役の3分の1以上を社外取締役とすることを求め、かかる要件を充たさない場合には、経営トップ(通常は社長及び会長)の取締役選任議案に反対推奨する旨が定められている。

 近時、社外取締役については、(複数)選任する上場会社の割合が増加傾向にあるが、本改定案①は、その流れを更に強めるものであると言える。なお、コーポレートガバナンス・コードにおいても、取締役の3分の1以上を独立社外取締役とすることについての言及がなされている(原則4-8)が、本改定案①では、社外取締役に独立性を求めていない点が異なる。

 また、本改定案①の対象は、いわゆるモニタリング・モデルを志向する指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社のみとしており、マネジメント・モデルを志向する監査役(会)設置会社はその対象外である点も指摘したい。

 なお、各社が適切な社外取締役を選任するための十分な時間を確保するため、本改定案①は、2019年2月から施行される予定である。

 

2.② 買収防衛策の総継続期間要件の導入

 本改定案②は、買収防衛策議案に関する評価要素として、買収防衛策の「総継続期間」が3年以内であることを追加するものである。

 ここで言う「総継続期間」とは、「買収防衛策の導入時点から、今回提案されている買収防衛策の有効期間終了までの合計期間を指します。買収防衛策を導入し、その後最初に開催される定時株主総会までに株主の承認を求める場合、提案される買収防衛策の有効期間を指します。」と説明されているが、買収防衛策の内容を(大きく)変更して更新した場合や、買収防衛策を一旦廃止して、その後に改めて買収防衛策を(再)導入した場合に、どのように取り扱われるのかは必ずしも定かでない。なお、本改定案②の趣旨(買収防衛策はあくまでも一時的な手段であり、長期継続している買収防衛策は、経営者の自己保身と解釈されかねない等)からすると、前者については合算して「総継続期間」が算定される、後者については新旧買収防衛策の内容の相違点、廃止期間等に応じて実質的に判断されるのではないかと推測される。

 また、実務上、既に導入されている買収防衛策については、その有効期間を3年と設定している企業が多いため、買収防衛策を更新する場合の大半が本改定案②に抵触し得ることになるが、そもそも買収防衛策議案については、現在もISSが賛成推奨することは稀であるため、本改定案②が施行されたとしても、賛否の判断に与える実質的な影響は大きくないと考えられる。

2018年版の日本向けの議決権行使助言方針(ポリシー)の改定案
 ① 指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社の取締役会構成要件の厳格化

  1. → 取締役の3分の1以上を社外取締役とすることを求める。3分の1未満の場合には、経営トップの取締役選任議案に反対推奨する。
  2. → 社外取締役の独立性は求められていない。
  3. → 指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社のみを対象。
     

 ② 買収防衛策の総継続期間要件の導入

  1. → 買収防衛策の「総継続期間」が3年以内であることが必要。
  2. → 買収防衛策議案については、現在もISSが賛成推奨することは稀であるため、賛否の判断に与える実質的な影響は大きくない。

 

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