東弁、法制審議会民事執行法部会における「民事執行法改正に関する中間試案」に対する意見を提出
岩田合同法律事務所
弁護士 羽 間 弘 善
平成28年9月、民事執行法部会(以下「本部会」という。)(部会長・山本和彦一橋大学大学院教授)が設置された後、本部会において、権利実現の実効性を高める等の観点から民事執行法制の見直しについて審議され、平成29年9月8日に、「民事執行法の改正に関する中間試案」(以下「中間試案」という。)が取りまとめられた。
民事執行法は、昭和54年に制定された後、平成15年及び平成16年に、社会・経済情勢の変化への対応と権利実現の実効性を高める等の観点から改正が行われ、勝訴判決等を得た債権者が債務者財産に関する情報を取得するための制度として、財産開示手続の創設等がなされた。
しかし、財産開示制度(民事執行法196条以下)は、債務者にその財産に関する情報を開示させる制度であるが、開示義務者の開示期日への出頭や開示を強制するための手続きは規定されておらず、その制裁も秩序罰である過料にとどまることから、実効性が十分でなく、利用件数もそれほど多いとはいえない実情があった。そのため、債務者財産に関する開示制度の実効性を向上させるための見直しが必要であるとの指摘がされていた。また、その他にも、近年、暴力団排除の取組が官民を挙げて行われているが、民事執行法による不動産競売においては暴力団員の買受けを制限する規律が設けられていない点や、現行の民事執行法には子の引渡しの強制執行に関する明文の規定がない点についても見直しの必要がある旨の指摘がされていた。
以上の指摘を踏まえて、本部会において、民事執行法制の見直しについて協議がなされ、中間試案が取りまとめられた。
中間試案においては、財産開示制度の手続違背に対する罰則の強化に加えて、債務者以外の第三者(金融機関や一定の公的機関等)から債務者財産に関する情報の提供を求めることができる制度の創設等が提案されている。
現在、債務者の銀行預金債権の差押えを行うためには、当該預金債権の取扱店舗を特定しなければならず、そのために予め取扱店舗を把握しておく必要がある。近年は、メガバンクにおいて、確定判決や和解調書等の債務名義の存在が確認でき、かつ、弁護士照会(弁護士法23条の2)によって開示請求がなされた場合等、一定の場合に預金口座情報の開示に応じる運用がなされているが、預金情報の開示に応じない金融機関もあり、預金債権の取扱店舗が把握できずに、強制執行が不奏功に終わる場合も少なくない。
このような状況を踏まえると、実際に債務者財産情報を第三者から取得する制度が新設された場合に、どのような要件・手続きを課すのかという課題はあるものの、権利実現の実効性を高めるため、中間試案で提案するような債務者以外の第三者(金融機関や一定の公的機関等)から債務者財産に関する情報の提供を受ける制度を創設することについては、大きな意義があると考えられる。
番号 | 項目 | 提案の概要 |
1 |
現行の財産開示手続きの見直し |
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2 |
第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の新設 |
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