中南米諸国向けファイナンス取引に関する考察
――メキシコ編(1)――
西村あさひ法律事務所
弁護士 杉 山 泰 成
1 日本の金融機関によるメキシコ法人に対するファイナンスの提供
⑴ ファイナンス取引のタイプとレギュレーション
メキシコには既に多数の日本企業が進出しており、従来からの取引関係や低金利の資金提供を求めて、日本の金融機関からの資金調達を希望する日系企業からの需要は大きいと思われる。
現状のメキシコの規制当局は、メキシコ国内金融機関向けのレギュレーションをクロスボーダーでファイナンス取引を行う海外の金融機関に直接適用するアプローチは採っておらず、ローン、ファイナンス/オペレーティング・リース、割賦/延払売買など様々な形態で日本の金融機関がファイナンス・サービスの提供を行うことは可能となっている。また、メキシコの外国為替管理規制については、現状では日本からの金融取引について、原則的・一般的に適用されるものはなく、従って、日本の金融機関は、メキシコ法に基づく金融・外為レギュレーションを特に意識することなく取引の組成が可能である。
⑵ 準拠法・裁判管轄の問題
メキシコ法人向けのクロスボーダーのファイナンス関連契約の準拠法や裁判管轄の合意については、後述する担保に関する一定の例外を除き、原則として契約当事者間の合意が優先すると解されている。そして、金融取引の準拠法・裁判管轄を決定するにあたっては、債務不履行や期限の利益喪失時に、債務者に対して訴訟を提起し、執行するまでの手続的・費用的負担を考慮する必要があると思われる。
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